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会社の備品
【OL/お姉さん 官能小説】

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入社-1

■視点 岡田香澄

「岡田香澄さん。現在我が社には、女性社員が一人もいません。もしあなたが入社をしたとき、女性があなた一人だったとしても大丈夫ですか?」
 面接でこんな質問をされたことを、何となくだが覚えていた。確か、大丈夫ですっ!と、無駄に元気よく回答したんじゃなかったかな。

 何が大丈夫なのか、何が大丈夫じゃないのか良く分からないけど、高卒の私を雇ってもらおうと思ったら、それこそ元気ぐらいしか取り柄がないと思い、どんな質問にも元気よくハキハキと答えていた記憶がある。

 それでもどうせダメだと思っていただけに、内定通知をもらった時は、二度見どころか、三度見した。ちゃんと『内定通知』の文字もあったし、名前も『岡田香澄様』と書かれていた。同姓同名でもない限り、間違いなく、私への内定通知だった。


 私の家族は母と中学二年生の妹、小学六年生の弟の四人家族だ。父は私が小学四年生の頃に離婚して、家を出て行った。どうしようもない人で、ギャンブルも女遊びも派手。だから、家にいた記憶があまりない。

 母は諦めきっていたが、私には家族をかえりみない父が許せず、小学四年生のとき、久しぶりに帰ってきた父を怒鳴り散らした。その結果がどうなったかというと、拳が頬に飛んできた。パーではなくグー。

 殴られたショックで大泣きした私は、その後のことは良く覚えていない。しかし、台所から包丁を持ち出してきた母が、それを父に突きつけながら、
「この子たちは私が育てる!養育費もいらない!その代わり、二度と私たち家族の前にその顔をみせないで!」
 と叫んでいたことを今でも鮮明に覚えている。

 娘に手を出したことが、母の逆鱗に触れたようだ。ただでさえ愛想をつかしていたところに娘への暴力。これが決定打となり、両親は離婚し、我が家は母子家庭となった。


 それからは母が女手一つで私達を育ててくれた。もともと裕福ではなかったが、それからは更に貧困に喘いだ。あんな父親でも少ないながら生活費は入れていたようだ。母は、その穴を埋めるように昼夜働いていた。

 私のせいで両親が離婚したために招いた結果に、私はずっと負い目を感じていた。だから、高校卒業と同時に働くことを母に告げた。
 奨学金という手も考えたが、それでは最低でもあと一年間は働けない。これから進学を控える妹や弟にかかる費用を考えると、少しでも早く家にお金を入れたかった。

 しかし、母からは最低でも専門学校は出なさいと、猛反対された。とはいえ、私だってここは譲れない。やっと、家族への負い目を払拭して、大好きな母へ親孝行が出来るのだ。

 話しは平行線のまま、いつ終わるとも知れない戦いだったが、お互いの間を取る形の折衷案に落ち着いた。

 それは、一社だけ入社試験を受ける。それで内定をもらえれば就職する。ダメなら進学をする。しかし、受ける企業は、母が納得するだけの企業、つまり将来性があって、私が将来的に食い扶持に困らない企業であることが条件だった。

 とはいえ、そんな企業の求人を探すのは大変だった。たとえあったとしても、母が首を縦に振らない。初めっからどの企業の求人情報を持って行っても、頷くつもりなかったんじゃなかろうかと思っていた頃だった。


 私の住む地域には、とある大きなIT企業がある。そこはゲームを作っている会社で、そこが開発したスマホアプリのゲームが世界中で大ヒットした。やったことのない人がいないほどの人気を誇り、新たに作れるゲームも斬新なアイデアによってランキングは常に上位。

 今では世界の大企業のリストに名を連ねるまでに急成長を遂げた。

 そんな会社が事務員の求人を出していたのだ。私は、その求人情報を持って母の元に向かうと、さすがに母もこの企業には首を縦に振らざるをえなかった。


 こうして私は入社試験を受けて、晴れて内定通知をもらったというわけだ。正直、合格するなんて思っていなかった。だって、あのとき受けた人数は多かった。どんな倍率だったんだろう。

 しかし、私はその狭き門をくぐり抜けた。母も納得せざるをえず、私は高校の卒業と同時に社会人への仲間入りを果たしたのだった。


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