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カノン
【学園物 官能小説】

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カノン-7

 何度も繰り返し「好き」と言われると、くすぐったくてしかたがない。
 わたしは泣いているのに、くすくすと笑ったりしてなんだか胸の中がくるりとひっくり返ったような妙な気持ちになった。

 先生に恋人がいると知って、あんなに悲しかったのに。あんなに切ない気持ちになったのに。

「羽柴くん、ありがとう。なんだかちょっと気持ちが軽くなったような気する」
「えっ、俺の下半身のおかげで?」
「ちょっとその言い方は嫌だけど……(笑)」
「まぁ俺からしたら最大のライバルが消えてくれて大助かり。あとは花音ちゃんが俺を好きになってくれるだけ」
「でも羽柴くん、いつも女の子たちに囲まれてるじゃない。わたしなんかより可愛くて素敵な子がたくさん」
「何言ってんだよ。みんな仲いい友達。好きなのは花音ちゃんだけだよ」

 ふうん、とわたしは目を閉じたまま羽柴 潤の胸元に顔を押し付けるようにして言った。
 意外と厚めの胸板。
 わたしをすっぽりと包んでしまえるくらい、羽柴 潤って大きかったんだ──。

「三枝みたいにはなれないけどさ、俺、ほんと花音ちゃんのことが大好きだし花音ちゃんを幸せにできると思ってるから」
「すごい自信」
「だって俺、あと何年かしたらもっとずっといい男になると思うぜ? 大人の男にね」

 そう言いながら羽柴 潤がわたしを抱いたまま、ゆっくりとわたしをラグの上に押し倒した。
 羽柴 潤が斜めにわたしを見下ろす。左手をわたしの頬に当て、ゆっくりと顔を近づけてきた。

「ちょっ──羽柴くん」

 わたしは羽柴 潤の左手首を掴んだ。ぴくりとも動かない手。
 鼻と鼻が触れる。

「花音ちゃん、好きだよ」
「じぇ……ジェントルマンじゃなかったの?」
「しゃべると危ないよ」

 そう言った羽柴 潤の唇が、まるでスタンプを押すみたいにわたしの唇に重なった。
 ぷくりとした唇がとても柔らかくて、とても不思議な気持ちになった。
 そう思っていた次の瞬間、羽柴 潤の舌がわたしの唇を割った。

「んっ……んんっ」

 わたしの舌に羽柴 潤の舌が触れる。
 羽柴 潤の身体を押し戻そうとした左手を羽柴 潤がきゅっと掴んだ。
 舌を入れながら、羽柴 潤が体勢を変えた。上手に机を避け、たくみにわたしの膝を割る。

 ちょっと!
 この男……どこがジェントルマンなのよ!
 やっぱり三枝先生みたいな大人じゃないとわたしは嫌だっ。
 知的でクールで──こんなこと急にしないひとがいい!

 一瞬でも羽柴 潤のことをいいやつだと思った自分を馬鹿だと思った。


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