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カノン
【学園物 官能小説】

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カノン-2

「わたしねえ、あんたみたいにへらへらした男って好きじゃないの。知的なひとが好みなの」
「知的、ねえ。俺だって本気出せばいけるって」
「何がいけるのよ。どうがんばったって、三枝先生みたいな知的オーラはあんたには出せないでしょ」
「三枝ぁ? あんな堅そうなのがいいの?」
「真面目なひとって素敵だと思うわ」

 羽柴 潤がへぇーっと気の無い返事をした。そして、三枝ねえと呟くように言った。

 三枝先生と羽柴 潤を比べるなんて、三枝先生に失礼だわ。
 天と地、ダイアモンドと石ころ、ハーゲンダッツとただの氷ぐらいの差がある。

「1時間目、三枝か」
「そうよ。だからわたし超がんばって予習してきたんだから……って、そんなことはいいの、とにかく急がないと」
「ふーん。そっか」
「ちょっと、もう。退いてよ」
「俺が花音ちゃんをお姫様抱っこして行ったほうが早いと思うけど」
「いっいらないわよ、馬鹿!」

 こいつ、ほんと何考えてるんだろう。
 こういう調子の良さが嫌なのよ。ほんとイライラする。

「まぁいいや。じゃあ、おしゃべりしよう」
「嫌よ、ほんと急がないとやばいんだから」
「花音ちゃんって猫派? 犬派?」
「はっ? 何よいきなり」
「俺、猫派なんだよね。犬っぽいって言われるけど、猫派」
「えっ、うそ。犬じゃないの?」

 子犬みたいな雰囲気を出しておいて、本人は真逆の猫派だって?

「猫ってさ、犬みたいに忠実じゃないけどすっげぇ優しい動物じゃん? 飼い主が落ち込んでたら何も言わずにそっと隣に座って寄り添ってくれたりさぁ、親子喧嘩してたらすごい勢いですっ飛んできて仲裁に入ったり」
「あ、それわかる。うちもそう」

 思わず言ってしまった。

「花音ちゃん家、猫飼ってるんだ?」
「うん、まあ……。妹が小学生の頃に拾ってきた黒猫がいる」
「黒猫! 温厚で優しくて可愛いやつ!」

 羽柴 潤があまりにも嬉しそうに笑うから、わたしはつい飼い猫の“チムニィ”について話してしまった。

 猫好き同士の猫トークはとまらない。
 相手が羽柴 潤だと言うのに、わたしはそのまま学校に着くまで猫トークを楽しんでしまった。
 猫のおなかでモフモフする素晴らしさについて熱く語り合ってしまった。
 そして不覚にも、案外いいやつなのかもしれない、なんて思ってしまった。




 遅刻はせずに済んだ。
 でも、あんなに予習したにも関わらず小テストの結果は散々だった……。

 わたし、数学の才能はないみたい。

「野々原、放課後職員室に来なさい。その点数はちょっとやばい」
「は、はいっ」

 才能なくてよかった。
 三枝先生からマンツーマンで指導だーっ!


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