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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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M-5

布団の中で泣きじゃくる。
最低だ。
知っていたけど、瀬戸はやっぱり思った通りのことをする。
人を傷付けて嘲笑う。
あんなやつなんか、消えればいい。
そうとまで思ってしまう。
気付いたら涙は枯れ果てて、荒い呼吸を繰り返しながら眠りに落ちていた。

起きた時は隣にいるはずの湊が同じ布団で寝ていて、冷たいアイスノンが頬に触れていた。
10時。
モゾモゾ動くと湊が目を覚ました。
「熱出した?」
寝起きの目で問われる。
「…うるさいな」
「なんで泣いてた?」
「……」
「今度聞かせて」
その言葉の優しさを、今は感じ取れない。
湊は黙った陽向の身体を優しく包み込み、微笑んだ。
コツンとおでこが当たる。
「熱下がったっぽいね」
「うそ!」
陽向は体温計を脇に挟み、確認した。
なるほど、37℃。
万全ではないが自分の身体の強さを実感する。
「下がった!」
陽向が「よかったぁー」とニンマリすると湊も笑った。
「喜怒哀楽激しいな」
「ねー、今日休みなの?」
「今日はディナーから」
「じゃあ夕方までゆっくりだ」
「そーゆーこと」
夏へと向かう日差しが窓から降り注ぐ。

生温いような、痛いような。
自分の心の中のような。
色んな事がありすぎて、整理がつかない。
好きでいてくれるものを、いつかこの手で全て壊してしまいそうな気がして怖い。
それを吐き出したい。
だけど躊躇する。
言ってしまえば人を傷付け、自らも再生はできないだろう。
いつか来るその日まで、限界の気持ちは鍵のついた箱の中に閉じ込めよう。

そんな歌を歌った6ヶ所目の福岡。
あまり好みの歌ではなかったけど無理矢理盛り込んだ。
「あれ演るの珍しくない?」
日曜日の帰りの新幹線で洋平が言った。
「マイナー調だし、声も通るからさ。今の状況だと」
調子はすこぶる良いが、声だけはどうにも万全とは言えなかった。
「あはは!そーゆーことー?!体調戻ったかと思ったけど、喉の調子的にはあれがマッチしたわけか!」
洋平は幸せそうに笑った。
マイナー調だったからと言うのは嘘ではない。
何もかも今の心境にピッタリだったから歌いたかった。
心の壁がどんどん出来上がっていく。
嫌いなわけじゃないのに、心が遠くに離れていく。


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