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例えばこんなカリキュラム
【二次創作 官能小説】

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〜 国語・精読 〜-2

「女性の性器にかわる表現を、文中から5つ抜きだしなさい。 21番」

「ハイ! オマンコ、チツマンコ、子宮とそれに続く肉壁、陰部、それと……うう……」

「……」

 言いよどむ21番と、無言で見つめる12号教官。 このまま沈黙が続けば、間違った解答をいうよりも酷いことになる。 12号教官は『わかりません』や『黙ってやり過ごす』を許さない。 どちらの場合でも、ズレた解答より強烈な首絞めを入力する。 それを知っているのだから、どうにか解答を捻りださねばならないと、21番も必死に考えて、

「えっと……い、陰部と、恥部です!」

「よろしい。 では、その中で最も文中に頻出した表現は?」

「ハイ! オマンコです!」

「よくできました。 お坐りなさい」

「はいっ、ありがとうございます!」

 スムーズに終わるとはいえなかったが、ギリギリセーフ。 こういうやり取りもある。 
 続いて、

「女性器が興奮時に見せる現象に関する、作者の意見を60文字程度で述べなさい。 22番」

「ハイ! 『白濁粘液を内臓から分泌し、よれたヒダから垂らす様子は、涎や涙を彷彿とさせ、いかにも性欲しか思考のない下品さとみっともなさを体現する』です!」

「よろしい」

「ありがとうございますっ」

 立て板に水のように、22番が解答した。 こういうやり取りは滅多にないが、22番に限って言えば、どの教科でも、大抵教官の狙いに沿った解答を返す。

「男性器を『性器』と呼ぶ根拠はなにか、文中から抜きだしなさい。 23番」

「ハイ!」

 休む間もなく質問が続く。 一度の講義で100ページ近く文章を精読させるのだから、質問の数も40問は優に超える。 23番から28番まで当てられ、グッ、私はお腹に力を入れた。 次は私が当たる番だ。

「女性の世紀、という表現がもつ掛詞を説明しなさい。 29番」

「ハイ!」

 返事をして席をたちながら、心の中でガッツポーズ。 答えられない質問ではない。

「世紀という単語が、時代を著す世紀と同時に、オマンコを著す性器にかかっています!」

「それから?」

「えっ……」

 思わず呻いてしまう。 それ……から……? 世紀と性器の掛詞だけではない、というんだろうか? 当惑する私の首で、ヴゥン、首輪がゆっくりと狭まる。 

「あっ、あっ、うっく……」

 喉が押され、首筋が擦れる。 このままではダメだ、まだ教官が求める答えに達していない。 答えられるまで、教官は容赦なく首輪を締める。 額に泡のように汗が浮かぶ。 女性の世紀、女性の世紀、女性の世紀――とにかく何でもいいから答えなければ。

「じ、女性が、牝ともう1つの意味があります!」

「つまり?」

「えっ、あっ……あ、あの、女性……その、め、牝の声という意味です!」

「よろしい。 座りなさい」

「!!」

 半ば自棄で答えるうちに、どうにか正解に辿り着くことができたらしい。 女性と女声……自分で答えた内容ながら、よく思いついたと思う。 首にめり込みつつあった首輪が緩み、息が喉にふきこんでくる。 私は汗を滴らせながら、

「ありがとうございましたっ!」

 精一杯大きな声をだし、エボナイト棒の椅子に腰を下ろした。

「次の質問です。 女性が性器という言葉を使うことで――」

 息を荒げる私などお構いなしに質問が続く。 順番からいっても、この授業中に私が当たることはもうないだろう。

 現代文の評論を扱う講義は、文章の量からいっても質問の質からいっても、国語の中で特に手ごわいと私は思う。 文章を批判的に読んでいては、内容なんて頭に収まらない。 必然的に評論の内容を全肯定し、要点を把握するよう努めることになる。 評論の内容は悉く『男尊女卑』で『女性の淫らさ』にスポットをあてていることもあり、評論文を解釈するたび、牝である自分が情けなく、恥ずかしい存在だと再確認する毎日だ。
 




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