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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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L-2

家に着き、どのDVDから観るかでまた言い合いをし、ジャンケンで決めた。
やはり、湊の勝ちだった。
1枚目はSF映画で、宇宙人と人間の間に絆が生まれる…けど最後は別れ、という切ないストーリーだった。
陽向は完全に号泣していた。
「感動した…」
「おめーはいつも泣いてんじゃねーかよ」
湊が陽向のほっぺたを引っ張る。
「うるさいなー」
と、その時。
陽向の携帯が着信を告げる音を放った。
「電話?」
「う…うん、ゴメン」
陽向は相手も見ずに通話ボタンを押した。
「はい」
『もしもし?NINE BOXの佐藤です』
「あー!どうも。こんにちわ」
『あははっ!こんにちわ、お世話になってます』
「こちらこそ。あ…えっ……と、今日予約してましたっけ?」
『いや、予約はしてないんだけど…。ちょっと聞いてもらいたい話があって。今日来れる?みんなの時間が合う時でいいんだけど』
いやいや…あたしバンマスじゃないし……と、思いつつ「聞いてみます」
と、答えた。
『よろしくね。何時でもいいから』
「はい!わかり次第また連絡します」
そう言って電話を切った。
「佐藤さん?」
「え…なんで分かったの?」
「なんか社交的かつ『聞いてみます』ってそーゆー話かなと思って。予約とか言ってたし」
「さすが」
「またライブでどっか行くんか?」
湊はデッキからDVDを取り出しながら言った。
「…わかんない。なんの話なのかもサッパリ分かんない。でも来てって言われた」
「そか。桑野たちはこんなど平日は仕事だろ?へーきなの?」
「とりあえず、連絡してみる」

集まったのは21時。
2枚目のDVD『デッド・アライブ』を観て完全にテンションぶち上がりでスタジオ”NINE BOX”に着いた。
「ごめんね、急に」
佐藤が息を切らしながら走ってきた。
大介と洋平は私服、海斗はスーツだ。
「あー、いえ。なんか急ぎのことですか?」
大介が問う。
「この前レコーディングしたCDなんだけど、他の店舗にも渡したんだ。したらさ、是非ライブやって欲しいって連絡が来たんだ」
その言葉にみんな黙った。
…遠くに行くの?
「店舗って…」
「このスタジオの系列が全国に10店舗あるんだけど、そこでライブして欲しい」
「……」
「いや、仕事が忙しいのは分かってるし無理も承知のお願いかもしれないけど…」
佐藤は一呼吸置いて真剣な眼差しをした。
「Hi wayの音楽を全国に届けて欲しいんだ」
気持ちは有り難いし、全力で受け取って『はい!やります!』と言いたい。
仕事を捨ててでも音楽をやりたいと思う時は何度もあった。
特にライブをしている時は。
色んなバンドと出会って、たくさんの音楽を聴いて、たくさんの仲間ができて、お客さんの色んな表情を見て、なんて楽しいんだと思った。
みんながイエスと言うのなら、どこへでも行きたい。
でも、この都内を拠点として、ライブハウスまで所有する全国展開の大きなスタジオの責任者である佐藤の言葉には、ひどく重みがあるし、むしろ音楽で飯食ってけ感さえ感じる。
佐藤の言うとおりにしたら、全てが成功で終わるのか?
いや、それは違うんじゃないか。
音楽の世界は、そう甘くはないはず。
一人がやってみろと言って万人に受け入れられるはずがない。
それでも、やってみる価値はあるのか……。

全くわからない。

「今、答え出さなきゃダメですか?」
陽向は佐藤を見ずに言った。
「…できれば早めに聞きたい。予約とか色々あるからね」
「いつまでなら大丈夫ですか?」
「今週末には…」
「わかりました。土曜日に来るので、その時に伝えますね」
「わかった。ごめんね急に。でも、俺だけじゃなくて他のみんなもここのスタジオから君たちを応援してるし、もっと色んな人に知ってもらいたいって思ってるからさ。いい返事待ってるよ」
「ありがとうございます」
陽向はいつもの笑顔で出て行ったが、内心引きつっていたのではないかと余計な心配をしていた。
嬉しいのは嘘じゃない。
でも、色んな何かが邪魔をする。


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