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だって悪魔だもん。
【ファンタジー 恋愛小説】

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だって悪魔だもん。-2

第二章
 あ〜あもうこうやって生きていくしかないんだろうなあって諦めかけたころだったかな、チコリー・ブルーに出会ったのは。きっかけは俺の風邪だった…。
 「げほっげほっ…あ〜油断したな、頭痛ぇ〜」
 夏の終わりから秋にかけて、この時期に気を抜くとつい風邪を引いてしまう。でも今年はちょっと派手に体調をくずしたみたいだ。なかなか治らないから俺は病院に行くことにした。
 診察を終え薬をもらうと、俺は風邪の憂いを晴らしたくてその病院の屋上に出た。午後四時をちょうどまわった頃だっただろうか、まだ太陽が高い。
 「あ〜もう九月も終わりか。風が気持ちいいな。」
 屋上には俺のほかに、女の子が一人だけいた。柵に寄りかかって町並みを眺めている。時々吹く風がゆらゆらと肩まで伸びた黒髪を揺らしている。さてさてお顔を拝見…うん、かわいいな、俺のタイプだ。
俺は迷わず声をかけた。いわゆるナンパだ。でもそんな軽い気持ちじゃなかった。なんというか、運命を感じたんだ。なんだか神様が俺たちをめぐり会わせてくれた、そんな気がした。
 「私は別に…」
 あれ?考えてること、口に出してた。
 「まあまあ、それは冗談だよ。ほら、運命って聞くとつい『ああ、そうかも』って考えたりするでしょ?」
「私は別に…」
 あっさりしている。しかもさっきと同じセリフか。手強いな。
 「ああ、まいったな。こんな病院、こなければよかった。」
「なによ、どうしたの?突然。」
よし!俺の話に食いついた。
 「いやね、俺は病気を治しに来たのに、また新しく病気にかかっちゃったみたいなんだよ。『恋』というなのウィルスに感染したみたいなんだ、君の瞳のおかげでね!」
 …ひゅ〜…夏の終わりの風が、冷ややかに俺たちの間を流れた。 
 「プ…ックフフフフ、なにそのダサいセリフ。真顔で言わないでよ、アハハハ、おかしい。」
 奇跡だ!笑った。いつもなら無視か罵声のどちらかなのに…。ああ、神様、この瞬間をありがとう。
 俺はここぞとばかりに、いままで温めておいたギャグと口説き文句を連発した。そしたら始めはちょっと微妙だったんだけどそのうち俺のギャグがツボにはまってきて、かなり打ち解けられた。後で聞いたら俺が風邪声で馬鹿なこと言ってたのが面白かったんだって。
でも風邪が治ってからも俺たちの付き合いは続いたんだ。
彼女はずっと入院してるから、治るまでお見舞いって形で何度も会いに行った。彼女にその気はなかっただろうけど、俺にとってはそれは彼女とのデートだった。


第三章
 あれからもう一年近くが過ぎた。チコリーとはあいかわらず仲良くやっている。といっても、恋人になれたとか、そういう進展は何もないままだ。
ところで、一つ気になることがある。それは俺が悪魔だってことをチコリーはまだ知らないってことだ。でもある日、その秘密を明かさなければならなくなった。
いつも通りチコリーのお見舞いに行くと、ひとりの見慣れない女性がいた。なんとなく雰囲気でわかったが、やはり思ったとおりそれは彼女の母親だった。少し気まずく感じて、病室を出ておもてのベンチに腰掛けて、どうしようか考えてるとチコリーの母親がそっと俺の隣にやってきた。
 「あなた、もしかしてアーティさん?私はチコリー・ブルーの母でマロウ・ブルーと言います。はじめまして。」
 俺は慌てて立ち上がった。
 「は、はじめまして。ぼ、僕はアーティ・チョークと言います。お、お、お義母さん。」
最後のほうはつい小声になってしまった。はずみとはいえ、初対面でお義母さんはまずかったかな。
 「フフ。聞いてた通りだわ。面白い人ね、アーティさんって。」
 おいおい好印象だよ!
 浮かれている俺に、マロウさんがそっと話し始めた。
「アーティさん、どうかあの子とこれからも仲良くしてやってくださいね。」
 え!?お、お義母さん、それはつまり公認ということですか?
 「あの子の病気なんだけど、実はね、多分もう治らないのよ。」
 「え!?…それはどうして…」
 「あの子の病気はね、感染症なの。症状が軽くなれば退院もできるけど、脳に障害があってね、半身不随は免れないわ。でもつらいのはそんなことじゃないの。あの子の感染症、抗体がつくれない人にはすぐにうつるからお医者さん以外誰も近づけないのよ。もう後何日生きられるかわからないのにずっと孤独で…最後まで寂しい思いをさせてしまうのかと思うと、あの子がかわいそうで…」
 泣き声で、最後のほうは聞き取れなかった。言わなきゃ、俺が悪魔だってこと。
 「あの、俺には病気、うつらないみたいです。それで、その…俺、じつは…悪魔…なんです。」
 俺は勇気を出して告白した。終わりかな、これで。もう二度と近づかないでって言われるだろうし。でもそんな心配をよそに、マロウさんは怒らなかった。それどころか微笑んでこう答えた。
 「いいんです、神でも悪魔でも…あの子が寂しい思いをしなくてすむのなら…」
 ………俺は悪魔だし、このまま俺とチコリーが仲良くしてたら彼女の体調はもっと悪くなるかな。しばらく離れようかな。でもそうしたらチコリーが悲しむかな。それは嫌だな。悪いことだってわかってても彼女の笑顔が見たいな。ああ、やっぱり俺は悪魔なんだな。彼女の体調のことを考えもせずに、彼女の笑顔を見ることばかり考えちゃったもん。


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