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マリネしたマジックマッシュルーム
【痴漢/痴女 官能小説】

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5.-3

 伸びるような勢いで咬みつこうとしてるからだよ。だが彩希の顔を見ると、さっきまでの怒りの形相が、急に能面のような冷血なものになっていた。殺人を決心した人間の顔とはこういうのを言うのかと血の気が引いたが、
「康ちゃんのとこに行くの。離して大丈夫」
 そう言うから恐る恐る手を離した。手綱を切っても彩希は暴走する気配はなく、一旦安心した。だが怒りが収まったわけではないのは、瞳からビームが出て女の子を焼き焦がしそうな怨念の目線を向けていることからも察することができた。康介に向かって手を振っただけなのに罪が重すぎやしないかな。そう思いながら彩希とともにユースチームが引いていった方の出口へ向かった。
 選手たちがグラウンド横の広場で監督の前に立たされて訓示を受けている。その内の一人が遠巻きに立っている彩希に気づき、監督に見つからないよう隣の者に伝え、徐々に一団の中に伝達されていった。誰だ? 誰に用事なんだあの二人は。凡そスポーツの場に似つかわしくない女がミーティングが終わるのを待っていれば当然そうなる。監督が身振り手振りを交えたオーバーアクションで今日の試合の反省点を述べているが、選手たちの集中度は全く落ちていたので収穫は少なかった。
 康介も彩希が見ているのは気づいているようだった。そこへさっきの三人組も現れ、ちょうど監督が、以上、と言ってミーティングを終えた。三人組が一団へ声をかける前に、
「康ちゃん!」
 彩希が大声で呼んだから、由香里は肩を竦ませた。居心地が悪そうに顔を顰める康介に先輩らしき一人がニヤニヤとして肩を組んでいるところへ、サンダルを鳴らしてツカツカと近づいていく彩希を、選手たちはもちろん、監督やコーチ陣まで彩希の動向を目で追っていた。
「……おつかれさま」
 彩希が言うと、康介は目を逸らした。だが先輩は突然近寄ってきた褐色の金髪美人にニヤニヤしていて、
「黛ぃ……お前ってほんと、途中から入ってきたクセに調子こいてんなぁ。このキレーな人、知り合い?」
 そう言って康介の頭をワシャワシャと揺すった。そのモヒカンの頭が印象的で、アンダー何とかの日本代表とかいうのでテレビで見たことあるな、と由香里は思い出した。
「いや……、その、姉ちゃんっす」
 康介が目を伏せたまま答える。
「おー……」
 その先輩は、康介と彩希を交互に見比べ、「そーいや似てるなぁ……にしても、メッチャ美人じゃん。オネーサン、俺のこと知ってます? こー見えて結構有名人なんすけど」
 軽っ。自信満々に話しかけてきている男を、ガン無視する彩希の後ろから見ていると由香里とも目が合った。
「そちらの……」チラリと胸を見られた。「カッコいいオネーサンも黛のお姉さま?」
「いや……、姉ちゃんの友達です。札幌からの。……榎原さんお久しぶりです」
「ひさしぶり……康介くん」
 久しぶりだねー、と思い出話に花を咲かせたかったが、一人ヘラヘラと話しかけてくる先輩を置いて、薄っすらと漂ってくる不穏な空気がいたたまれなくてできなかった。そうっと歩を進めて彩希の顔を覗き込むと、腕組みをしたまま康介を冷たく睨んでいた目が、実際彼を目の当たりにして瞼がピクピクと緩み始めている。ちょ、絶対やめてよ、こんな大勢いる前で姉弟相姦がどーのとかやらかすの。
「……練習って忙しいんですか?」
 彩希が康介を向いたまま先輩に問うた。
「あ、俺に聞いてくれてます? ……んー、まあ毎日サッカーばっかですけど、休養日もありますよ? あれ? お姉さん、興味持っちゃったり?」
「サッカー全然知らないから」
「じゃ、俺が教えますよ。何でも。休み返上で!」
 その声が聞こえると、他のチームメイトもわらわらと彩希の方へ集まってきて、物欲しそうに彩希を眺めていた。大丈夫かなぁこのチーム。遠くから監督が苦笑いをして自分の車に乗り込んでいる。
 軍隊でもなければ高校の部活でもない。解散がかかれば、一定の規律を守ってさえいれば、とやかくは言われないようだ。
「教えて」
 由香里が驚いて彩希を見ると、親友が見つめていたのは先輩たちではなく康介だった。
「あ、ぜひぜひ! ヤッベぇ、次の休養日いつだっけ!? おい!」
 先輩が周囲のチームメイトを見回すと、
「ちがう」
「……え?」
「康ちゃん。次のお休みちゃんと教えてね。お姉ちゃん、康ちゃんに用事があるの」
 なーんだ、と色めき立った連中がガックリと肩を落とす。
「あ、いや……姉ちゃん」
「教えて。わかった? お姉ちゃんの言うこときけないの?」
「……」
「あっれ、黛ってもしかしてシスコン?」
 いや逆だよ。心の中でツッコんでいると、傍から、
「おつかれさま」
 とさっきの彩希の濁った声とは雲泥の差の可愛らしい声が届いた。目の前の彩希がゆっくりと声の主の方を振り向くのに合わせ、由香里もそちらを向くと、あの女子高生が立っていた。
(うわぁ、今、話しかけてくんのかよ……)
 由香里が唾を飲み込むと、制服のスカートをヒラヒラとさせて一団の中へ混ざってきた。黒髪がポニーテールに纏められているから顔立ちがよく見える。近くで見ると爽やかで可愛い。どこかの誰かと違って気品が香ってくる感じだ。いや、どこかの誰かもよくわからないファッションセンスを止め、そちらの方向へ注力しさえすれば充分気品を身に纏うことができるのだが。


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