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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-106

「うん。おんなじ名字だし、お隣さんだし、それに………」
 少し、言いよどんでから、
「お姉ちゃんの、彼氏さんだから」
 と付け加えた。
「ふたみのお姉ちゃんって………安堂一美先輩のことよね!」
「うん」
「ゆう先輩、すごい人なんですね!」
「は、はい?」
 きらきらと何やら見えてきそうな瞳で勇太郎を見据え、美野里が感嘆の息を漏らす。
「安堂先輩っていえば、とも先輩と並ぶ学園の人気者ですよ」
「そう、らしいね」
 その前に、とも先輩って誰だ? とは聞かない勇太郎。美野里のマシンガントークはまだ続きそうだったからだ。
「その安堂先輩のハートをあっさりと射抜くなんて……」
 羨望と恍惚をないまぜにした、星と薔薇が背景に散りそうな表情をする美野里。
「どんなふうにして、付き合うようになったんですか!?」
 ずずい、と美野里が身を乗り出してきた。ゴシップ好きな女子高生という彼女の側面が、顔を出している。
「ま、いろいろとね………」
 さすがに、美野里に言えるような出来事(※第1話参照)ではない。お茶を濁して難を逃れようとするが、彼女の探究心と好奇心はそれを許さなかった。
「学園内不特定多数の男子女子を敵に廻しておきながら、ノーコメントはナッシングですよ〜」
「いや、ね、その……」
「さささ、ずずいっと、ずずいっと」
「みのちゃん、あんまり……」
 ふたみが、ちょっと困った顔をしている勇太郎のフォローに廻る。もっとも彼女とて同じことをひとみから(かなりソフトなものに改ざんされた内容を)聞いている。だが、それは、姉妹という親密な関係が許したことだ。
いま初対面である勇太郎に、答えにくいことをずかずかと聞くのは、少しいただけないと思った。
「………そうですね、ごめんなさい、ゆう先輩」
 美野里とて、道理を知らぬ理不尽な少女ではない。すぐにはしゃぎすぎた己の非に気づき、勇太郎に頭を下げる。
「ああ、いや、気にしてないから」
 なんというか、緩急自在に変化する美野里のペースに振り回されている気はするが。
 話が途切れたことで、再びもくもくと弁当に集中する面々。
「よかったら、これも食べてくださいね」
 美野里に勧められるまま、勇太郎と兵太は、彼女の巨大な弁当箱にも手を伸ばしていた。
「あ」
不意に、ふたみの箸と兵太の箸がかちあった。
「す、すんまへん」
「う、ううん、平気ですから」
お互いに、なにやらぎこちない。そのまま動きを止め、ぼう、とする二人。
兵太は思わず勇太郎の方を向いた。なにしろ、この人には、目の前にいるふたみに自分が好意を寄せていることを白状しているのだから。
 案の定、意味ありげな笑みを浮かべていた。
「………」
 一方、ふたみも、少しだけ頬を染めて、せわしなく箸を口元に運んでいる。伏目がちに兵太のことを伺っていたかと思うと、時折、助けを求めるように、勇太郎に視線を投げかけてくる。
なんというか、ふたりとも初々しい。
(………これは、僕の出る幕はないな)
 そんな二人を見て勇太郎は思う。兵太とふたみは、互いに好意を持っていることがわかった。ちょっと兵太の背を押せば、万事はうまく行きそうな気がする。
 そうこうするうちに、予鈴が鳴った。
「じゃあ、兵太先輩。また、部活で。ゆう先輩も、ありがとうございました」
 美野里はにぱ、と眩しい笑顔を、
「それじゃ……」
 ふたみははにかんだ微笑を、それぞれ残して屋上を後にする。少し小走りなのは、一年の教室は北棟の一階にあるからだろう。
 その背中をゆっくりと追うように勇太郎と兵太は歩き出した。
「……はあ」
物憂げなため息は兵太のもの。
勇太郎はその肩に手をおいて、
「僕は、自分から気持ちを伝えたよ」
 とだけ言った。まあ、あんまり格好いい状況ではなかったけど、とも付け加える。
「そうでっか………」
 納得したのかどうか。浮かない顔つきのまま、兵太はもう一度、深く息を吐いていた。


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