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恋愛模様
【初恋 恋愛小説】

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恋愛模様-2

 ―ピンポーンッ。

「お前、鍵掛けて無いなんて不用心だぞー」
 何だかんだ言いながらも同じ間取りのこの部屋。かって知ったるお隣りさんだ。ズカズカと入って来る。
「たぁき来るから開けておいたの!ほら今日はオムライスだぞっ!」
 出来たてホヤホヤのオムライスをテーブルに乗せる。そして上からとろとろのハヤシソース。
「うわ、うまそー!」
「でっしょー?早く食べよ!いただきます!」
「いただきまぁす!」
 スプーンを口に運ぶ。一口目の驚きが見たくて、つい見詰めてしまう。案の定満面の笑みを浮かべるたぁき。湯気で真っ白に曇った眼鏡までも、私を幸せな気持ちにしてくれる。
「うまいなぁ。」
 この一言で舞い上がってしまう。結構単純なのだ。私は。
「サヨ。ぼーっとしてる。具合悪いのか?」
「いや、違う。なんでもないって!ほら、しっかり食って太れ。このモヤシの化身が!」
 見とれていました、なんて口が裂けても言えっこない。だから、つい悪態を吐いてしまう。
 たぁきはモヤシの化身と言われる程(言ってるのは私だけど)色白で細い。加えて厚ぼったい眼鏡がトレードマーク。オールシーズン、パソコンと向き合ってる不健全極まりない生活の賜物、らしい。背丈は170そこそこなのに、体重は50キロあたり。正にモヤシ。うん。
「悪かったね、モヤシで。…あ、そういえばサヨ、桜井先輩が連絡欲しいって。」
 食べていた物を吹き出しそうになる。間一髪、大丈夫…鼻から出てもいない。
「なっ、なんでたぁきが伝言受けて!?」
 桜井先輩は告白されて…なんとなくデートしたりする関係。断りたいのにタイミングが掴めない。こういうのが苦手。…で、自然消滅狙いで避けているのだけど…
「大丈夫か?…いやな、学食でばったり行き合って。俺は初め解らなかったんだが、桜井先輩は何故か俺を知ってたみたいでな…」
「さいですか…」
「なんか避けられてるみたいだって、ショック受けてたぞ?」
「あ…そう」
 仕方ない。避けているのだから。桜井先輩も意外に鈍感かも知れないなぁ。
「お前、意外に悪女か?」
「は?」
「なんか平然としてるし。付き合う気無いのに優しくして。性格悪いぞ。」
「馬鹿言うな。うるさい。この、モヤシ!ネクラ!オタンコナス!」
「はいはい。ったくお前は、かわんねぇなぁ。」
 妙に的を射ている。やっぱり13年も一緒にいるからか?ズバッと言われた言葉が痛い。言葉に詰まって、黙々とオムライスを食べる。胸の辺りがチクリと痛んだ。

――――――
「あの、桜井先輩…どうしてここに?」
 たぁきと夕飯を食べた翌日。昨夜の噂の人物、桜井先輩がアパートの入口で佇んでいた。
「沙夜ちゃん」
 たぁきとは違う発音。違和感…自分の名前じゃ無い感じ。
「俺、嫌われた?」
 意外に弱気な発言……ちょっとびっくり。断る事も出来ない程、押しが強いタイプだったのに。
「別れるの?」
 え!?付き合ってました?なんて自分勝手な…。そんな風に考えているのに、たぁきとの会話じゃないから言葉が先に出て来ない。考え無しの本心は言えない性格だから…。
「聞いてる?」
「は、…はぁ」
「どうなの?俺的には別れたくないんだけど。でも、さすがに避けられるのは想定外だったよ」
 想定外って…流行の言葉使えばいいと思ってるのか。文学部をナメんなよ。
「あんなネクラ野郎とは始終一緒にいるくせに、俺の事は避けるんだもんなぁ…心外だよ」
 …ネクラ野郎……
「心外で結構」
 みぞおちの方からジワジワと怒りが込み上げて来る。目頭が熱くなる。こんなヤツに…!
「あなたと付き合った覚えはありません。もちろん好きでも無いので、どうぞお引き取りください」
 一言一言を絞り出すように。より丁寧に、よりにこやかに。私の腹が立った時の対処法。頭にきた時こそ、偽りの自分を演じるにかぎる。


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