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おはよう!
【純愛 恋愛小説】

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おはよう!-4



気乗りしないまま、外倉庫に着いた和音はあらかじめ隊長から預かっていた鍵を使って扉を開けた。倉庫独特の、少し埃っぽい匂いが鼻につく。
プレハブで簡易的に作られているこの倉庫は、換気扇と窓が一つずつついているだけで、まとわりつく様な湿気が篭っている。
今はまだ少し肌寒さが残る三月だからこそ、和音は平然としていられる。
それでも長い間この場所にいたくはないので早々に頼まれ事を片付けようと、奥にあるDVDラックの引き出しを開ける。
いくつもあるDVDラックやCDラックが大小並び、様々な楽器ケースや衣装ケースなどが並ぶ棚がいくつもある、大きいとはいえない倉庫。
年度別に仕分けされている一つの引き出しに、同じ年度のDVDを入れる。
引き出しを戻すと、一息ついた。

「ふぅ・・」

頼まれごとは終わったので、戻ろうとした時。

バタンッ。

「!」

大きな音を立てて、何かが丁度和音の閉めたDVDラック上から落ちてきた。
驚いた和音が、そっと振り返って見る。
落ちてきた何か、は何かの本だった。A5サイズの大判本のようだ。
和音はそれを手にとってみる。表紙には、『ALBUM』と書いてある。
表紙をめくると、確かにそのタイトル通りに写真が貼ってあり、アルバムということが見て分かる。
だが、最近のものではないようだ。
改めて、表紙を見るとALBUMと表記してある下の方に年号が書かれていた。
計算すると、約11年前。


「なんでこんなアルバムが・・」

大方、誰かが懐かしさを感じて取り出したのだろうが、ラックの上に置くのではなく元の場所に戻せばいいものを。
和音は溜息をつきつつも、元々あったであろう場所にアルバムをしまう。
その瞬間。
ピラっと一枚の写真が落ちた。

「ん?」

アルバムをひとまず戻し、写真を拾い上げる。
おそらく、先程表紙を開いて中身を確認した際に剥がれ落ちそうだった写真が空気にさらされたせいでページから剥がれ落ちてしまったんだろう。
何の写真か気になり、真っ白な面を裏返しにする。

「・・・・あれ?」

その写真はやはりアルバムから落ちた年の合宿の写真だったようで、何人か鼓笛隊のメンバーが写っている。
その中には、幼い自分の姿も見受けられる。
そこまではいい。
写真の中に存在している子どもたちが楽しそうに花火をしている後ろで、じっと一人の女の子を見つめている、見慣れない男の子が写っていたことに和音は戸惑った。
なんといっても、その男の子が見つめている女の子とは他ならぬ自分であるのだから。

「・・・誰、この子・・」

黒髪で、小顔の小さな男の子。その小柄な男の子が鼓笛隊のTシャツを着ていることから、鼓笛隊の一員だったことがうかがえる。
だが、和音はまったく覚えていないことから、少なくとも同じ金管パートではない。
バトンでもないとすると、残っているのはスネアパートだろう。
だとしても、こうして一緒に合宿に参加しているのだから少しくらいは覚えていても良いはずなのだが。

「和音ちゃーん?」

首を傾げていると、倉庫の下から自分を呼ぶ声が聞こえる。
慌てて死角となっているラックの前から離れて入口に向かう。
入口には、自分を呼んだ鼓笛隊の幼い子どもが待っていた。おそらく、なかなか自分が戻ってこないことを心配して呼びに来てくれたんだろう。
どうかしたのかと聞かれるが、特別変わったことは無かったし、写真の話をしたくても自分より幼いこの子が11年前のことなんて分からないだろうから、何でもないとごまかした。




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