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おはよう!
【純愛 恋愛小説】

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おはよう!-1



初めて、奏多と練習をした日から三日が経った。
結局あの日はホルン本体で音を出すことは出来ずに終わってしまった。
奏多は顔に出るくらい、とても悔しがっていた。
そんなに焦らなくても良いじゃない、と和音は思うが、奏多の気持ちに共感出来ない事実もあるから言葉にすることはしなかった。
今日は、本当なら平日で練習が存在しないのだが、春休みということで特別に練習が組まれることになった。今までにない試みで隊員たちは戸惑ったが、どうせ春休み。宿題等も出なければ毎日予定があるわけでもなく、どちらかというと暇なので全員、文句が出なかった。
今、しぶしぶ練習場へと向かう和音もその一人。
正確には、文句が喉元まで出かかったのだが、いつの間にか隣に座っていた奏多に、

「じゃあ、また練習でな」

と声をかけられて、和音が何も言わない内に軽やかにスネアの子達の元へ言い逃げしたのだ。奏多本人は言い逃げとは思ってないのだが。
仕方なく、春期の講習があるからと理由をつけて断ろうとしたのだが、運が悪いのか運命なのか、その日・・つまり今日に講習など入っていなかった。
嘘をついてまで断る気にもなれず、仕方なく参加をすることが決まったのだった。
もとより、和音に不参加という選択肢は与えられていないのだが。

「はぁ・・」

いつものコンビニで飲み物を買い、練習場への短い距離を重い足取りで歩く。
何故、重い足取りなのか。練習自体が憂鬱なことと、せっかくの休みを返上されたこと。
だけど、それ以外の理由。和音はその理由を心の何処かで分かっている。
こんなに重苦しい気持ちで向かっても、結局のところいざ練習となればホルンに集中出来る事、奏多に絆されてしまう事を。

「・・私は・・」

どうして奏多に絆されるのだろう。どうして、自分なのだろう。
そんな考えばかりが、この三日間現れては消え、現れては消え、を繰り返した。
別に好きというわけでもないし、嫌いというわけでもない。
・・ただ、約束を取り付けられただけで。
それなのに、結局奏多の練習を見たのは何故だろう。

「・・ホルンを、辞めたかったのに・・」

小さく吐き出した言葉は、和音の耳ですらも聞き取れなかった。




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