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虹色の楽譜
【女性向け 官能小説】

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-3


穏やかに嬉しさを表現する奏くんとは裏腹に
私は何か落ち着かなかった。

「俺の、マンションに行く?」

確かに付き合っている期間は短いけど
それでも奏くんの部屋に行くのは初めてだった。

学生なのに、マンション?と思ったけど。
そこは音大生専用のマンションで。
各部屋にグランドピアノが置けるようになっていて
もちろん防音だった。

お祝いにもらった大きな花束を玄関に置いて
ネクタイをゆるめながら
ピアノの前の椅子に座った。

ゆっくりと私に向かって手を伸ばして。
私はその手に吸い寄せられるように、近寄って行った。

「茜さん。ありがとう。茜さんのおかげで
何年振りだろう。コンクールで優勝できたよ」

私は、何も、してないよ。

「柳下さんから何か俺の事は聞いてる?」

苦笑いした奏くんに私は小さくうなづいた。

「録音の時に柳下さんがいた事は気が付いてたんだ。
あの人は、俺がコンクールに出始める前に良く出ていた。
彼の演奏は今でも覚えているよ」

「柳下さんが、奏くんは天才だって」
「・・・モノトーンの?」

決していやみではなく。
静かに笑いながらそう言った。

自分で。
この言葉を普通に言えるようになるまでに。
この人は一体どれだけの悔しい思いをしてきたんだろう。



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