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盗撮事情
【ロリ 官能小説】

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事のはじまり-1

校舎内に人がいなくなった。私立の学校では、職員の退勤時刻やその確認者をチェックする決まりが公立学校より普通ゆるい。無論、そうでない所も沢山あるが、鈴音の勤めている小学校は特に緩いのだった。最後に残った教員が、点検をして施錠する習慣であった。

鈴音士郎は二十九歳。二十五歳から勤めて四年目になっていた。大学を卒業してすぐ大手のスーパーに就職したのだが、一年で辞めた。親から勧められての就職であったし、仕事内容に興味もなく、そういう仕事を割り切って続けられるような性格でもなかったからだ。しかしそれ以上に鈴音に耐え難かったのが大人との付き合いだった。気の合わない人間と一日中一緒にいることは鈴音にとって苦痛だった。しかもその時間が生活の大半を占めるとなれば、金は溜まっても、使う目標があるわけでもなし、生きることそのものに砂を噛むような思いしか感じられなくなっていったのだった。
鈴音は、何が自分の命にとって大切なのか、どうしても無くてはならないものは何なのか考えた。そして選んだ仕事が小学校の教員だった。教育学などに興味はなく、教員免許もなかった。だが、小学生には興味があった。ペドフィリアだったからである。鈴音は調べて、短期間に二級免許の取れる講座を見つけた。集中力のある鈴音は資格試験に合格したばかりでなく、地元の私立学校の教員試験を受けると、すぐに採られた。急遽、産休で退職する職員の代用が学校に必要だったことも幸いした。
受け持つことになった四年生は、鈴音にとって、ちょうど心惹かれる対象に入る年齢だった。若い男の教員は概して人気の出るものだが、鈴音もその例外ではなかった。クラスの子供には勿論のこと、よそのクラスの子供にも好かれた。ここに至って、真面目に教育に関わろうという意志が鈴音に目覚めた。愛は愛である。例えば高校の教員が男であれば、女子生徒に幾分か性愛の情を持たないことは無いだろう。しかしそれが必ず犯罪に結びつくなどということはあり得ない。ペドフィリアとて同じである。ただ、高校生と異なり、代償となるような対象が存在しない分、思いを叶えられる機会が見つけられず深刻なのである。そしてその機会は一生ない見込みが高い。そういうわけで、叶えられる機会が生じたなら、何を置いても実現させる運びにペドフィリアの場合なりがちなのだ。
教員の世界というものを鈴音が初めて内側から体験した時は、会社に比べて随分と変わった所だと感じた。はたから見れば職員室など暇そうで、授業のときだけ働けばよい楽な職場だと思われる。ところが、いざ働いてみると、休み時間にも子供の相手をしながら指導をし、しかも授業の準備は続けなければならない。採点はもちろん、印刷や集金といった事務的な作業がある。帰宅してからも生徒の家庭から長い電話があったりと、気の休まることがないのだった。また、土日は大抵部活動があった。
時おり研修で出張した時に、公立学校の教員と話すことがあったが、そこでよく異様な経験を鈴音はした。会話の成り立たない者がいるのである。教員としてしか話ができなくなっている人間が沢山いて、彼らは常に「教える」調子なのだ。公立の教員はそれ程までに研修で叩き上げられているのだろうかと鈴音は思った。閉口した鈴音は「教師病」とこれを名付けた。
他方、漫画やドラマと異なり、悪意のある人間が殆どいないことも分かった。会社には、露骨に悪人と言える上司や同僚、更には取引相手がいたものだ。記憶を辿れば、嫌な教師、恐ろしい教師は確かにいた。だが、生徒に映る教員の姿には、たいてい演劇性が伴っているものだと鈴音は知った。態度や言葉遣い、更には表情までを教室と職員室とで使い分けている者が沢山あった。ただ、授業とは別の顔を持つような人間が子供にとって信頼に足るものかどうか、鈴音には疑わしく思われてならなかった。
その時から四年が経過した今、その疑わしい人物に鈴音はすっかり成り下がっていた。演技の顔を作ったのでなく、行動が分裂したのである。

誰もいないことをもう一度確かめてから、鈴音は二階に上がり、高学年用女子トイレのドアを開けた。携帯電話のライトを点けて、ある個室の便器を覗いた。小型カメラの回収であった。そういうことを三度繰り返した。それから鈴音は、幾つか汚物入れを漁り、暗い校舎を後にした。


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