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飛べない鳥の飛ばし方
【ファンタジー 官能小説】

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喜びと痛み-2


 集めた情報で益々謎が深まり、目の前に居るのに実際は居ないのではないかと思う程、カウル=レウム王の周りは白……というか、空白だった。
 おかげで本日もたっぷりお仕置きされて満身創痍で帰宅した所。
 唯一の救いは相手がスパイディではなく、部下の方だった事。
 因みに、こっちは性交無しの鞭叩きだったが。

 リョウツゥが見えなくなると腕を伸ばして手提げ袋を取る。
 そのまま玄関でドアに背を預け、袋を開けて中身を物色した。

(オレはお地蔵様かっつうの)

 まるで御供えをするかのようなリョウツゥの行動を思い出し、喉で笑った。
 こうやってたまに届く差し入れは、ジル的にかなり助かっていた。
 毎回、罰を受けるので基本的に傷だらけなジルだが、銀の民は治癒能力が強いので大抵はすぐに治る。
 しかし、その分体力消耗も激しく動けなくなる事もしばしば。
 そんな時のリョウツゥの手料理は、最高のご馳走だ。

(お礼……した方が良いかなぁ……)

 サンドイッチをかじりながら考える。
 生活が不規則なので彼女と話したのはほんの数回だ。
 しかも、挨拶程度の会話といえないような会話しかしていない。
 何をしたら喜ぶかさっぱり検討がつかなかった。

(……飛びたい……か……)

 以前、リョウツゥが身の上話をしていた時に聞いた言葉。
 飛べるようになって1人前になるのだ、と。

(いやいや、いくら何でもお礼がでかすぎだろ)

 そもそも、飛び方なんか知らない。

(ん〜あ〜……筋肉の鍛え方の問題なんかなぁ)

 自分で無理だろ、と思ったくせに勝手に頭の中で彼女が飛べない理由を考えていた。

(お礼だ、お礼)

 そうだ、まずは少し話をしてみよう。
 そしたら彼女が何をしたら喜ぶかとか、飛べない理由が少しは分かるかもしれない。
 ジルは自分に言い訳をしながら差し入れをたいらげ、体力回復の為に寝る事にした。

 リョウツゥの帰りが……とても待ち遠しかった。



「リョウツゥちゃんは今日も元気ですねぇ」

 植物園の裏でスコップを持って腐葉土をかき混ぜていたリョウツゥは、かけられた声に振り返る。

「園長さん。おはようございます」

 泥が付いた顔を袖で拭きつつ挨拶をした相手は、園長のキアノだった。



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