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【その他 官能小説】

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底辺からの出発-2

「ええと、田所千鶴さん」


「はい」


「この度は、我がコスタ・デル・ソルにご依頼を頂きありがとうございました」


「……はい」


「まずは、ご契約の前にご意志の最終確認をさせて頂きますね? 田所さんは、弊社のコンセプトをご理解頂いた上で、お申し込みされましたか?」


俺の問いに、彼女は一瞬身体をビクッと震わせた。


俯いた顔が、みるみる内に赤くなって、しばらくしてから、


「はい……」


と、消え入りそうな声で頷く。


こんなウブで可愛い女の子を見てると意地悪したくなるのは男の性(さが)っつうもんで。


「本当によろしいのですね? 性行為……いわゆる、セックスを撮影するんですよ?」


そうやって、口にすることで軽い言葉攻めを楽しみつつも、すかさずバインダーを田所さんの目の前に差し出した。


俺の会社、コスタ・デル・ソルは性行為を撮影する会社である。


AV制作会社となんら変わらないけれど、それと異なる点は、あくまで個人で撮影した作品を楽しんでもらうというもので、作品は決して流通することはないって所。


カップルや夫婦で依頼するのも大歓迎だし、女の子一人で依頼するのも大歓迎。


相手がいない場合は、元プロの男優がお相手致します、とまあ、こんな会社概要だ。


こんなふざけた内容だけど、申込みはそれなりで。


AV女優の真似事をしてみたい、なんて女の子が結構いるってことが、正直驚きだった。


細々ながらも業績は上向きで、「女優さんとの絡みはしていないんですか」と、男性からの問い合わせもチラホラある。


そんな要望を受けて、男性の申込みにも対応出来るよう、只今必死に秘書の傳田を女優として働かないかと口説いているが、彼女は頑として首を縦に振らない。


と言うわけで、男性一人のお申し込みは只今受付していない。


だけど、この状態がベストなんじゃないかと、密かに思う。


だって、素人の女のセックスを傍目でみる方が断然楽しいんだもの。


……とまあ、あまり大きな声で言えないような会社をどうして立ち上げたか、というと。


AV男優をやった人間が、全うな仕事に就けるかと半分やけくそになったから、というのが最大の理由である。









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