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忘れ得ぬ夢〜浅葱色の恋物語〜
【女性向け 官能小説】

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温かな職場-6

「ごめんね、こんなはしたない格好で」神村は申し訳なさそうに笑って、また水を喉を鳴らして飲んだ。
「花壇の手入れをなさってたんですね」
「うん。君たち忙しそうだし。僕も嫌いじゃないから」
「お昼、まだなんでしょう?」
「ああ、一区切りついたら食べようと思ってた。もう片付けようとしてたところだよ」
 そう言って彼は私を伴って『たんぽぽの花畑』の見える所に移動した。
「確かに主任、お好きそうですね、園芸」
 神村は肩をすくめた。「若い頃はこんなことには全然興味も知識もなかった。でもこの職場に来て、しぶしぶやってるうちにおもしろくなってきてね」
「そうなんですね」
「でも良かった」
「え?」
 神村は私の顔を見てにっこり笑った。「ここにコスモス植えといて良かった」

 改めて見ても素敵な笑顔だった。子供のように屈託なく自然な笑顔が作れる人は、そう多くはない。私の知っているだけでもこの目の前の男性と、大阪にいる恋人アルバートぐらいだ。

「コスモス、好きなんでしょう?」神村が訊いた。
「はい」
「もうしばらくはこうして咲いてくれてるから、たっぷり楽しんでね」
「ありがとうございます」
 神村は腰に手を当て、ふっとため息をついた。「一年中咲いてればいいのにね」
 わたしは小さく笑って言った。「それじゃあ好きになれません」
「どうして?」
「花は自分が決めて咲く一時期にしか見ることができないから、きれいに見えるんです。そうじゃないですか? 土いじり好きの神村主任」
「素敵なこと言うね、浅倉さん。確かに君の言う通りだ」神村は右手を後頭部に当てた。

 その時私は、神村の首から鎖骨に向かって汗の粒が流れ落ちるのを見た。それはそのまま勢いづいて彼の胸を伝い、へその横を通り過ぎて穿いているジャージーのウェストゴムに吸い込まれた。

「自分の手で蒔いた種が芽を出して、育って、世話をした自分へのお礼のようにきれいな花を咲かせてくれる。そう思うと何だか楽しくてね。病みつきになっちゃったんだ」
 神村は本当に楽しそうに笑った。

「コスモスってね、」神村は花壇に向かってしゃがみ込み、競うように咲くその花の一輪にそっと手を触れた。「水揚げが悪くて、切り花には向かないんだ」
「知ってます」
 神村はそのまま振り向いて私の顔を見上げた。
 私も神村の隣にしゃがんだ。「花瓶に挿しても、三日と保たない。そんな花ですよね、コスモスって」
「うん。だからこの花を君の机に飾るのは無理だなあ」
 神村は立ち上がって頭を掻いた。

 頬を赤らめている私に気づき、彼は慌てたように言った。
「あ、ご、ごめん、すぐにシャツ、着るから」
 そして慌てて彼は手に持っていたTシャツを広げると、首に提げていたタオルをとって首を通した。そのシンプルで白い生地のシャツは、彼の肌から大量に噴き出していた汗に濡れて、彼の胸の乳首を透けさせた。

 鼓動はますます速くなり、慌てたように立ち上がると、私はここに彼を訪ねた用事もすっかり忘れて、その場を焦ったように離れた。


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