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浦和ミュージックホール
【その他 官能小説】

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インタビュー ウィズ 陽子-3

 「ええ、だからこっちに来ても責めが欲しくて・・・でもSMって信頼できる相手とじゃないと出来ないんです」
 「そうだよね、縛られちゃうんだから」
 「で、結局SM雑誌の編集部を訪ねて・・・その撮影でこの劇場を使わせてもらってみどりさんと仲良くなったりして・・・」
 「そういうことだったの・・・その叔父さんは?」
 「亡くなりました・・・」
 「無神経なこと聞いちゃったね」
 「私もずっと知らなくて・・・追い出されてからは家との連絡も取ってませんでしたし、叔父の携帯はずっと繋がらなくて・・・・知ったのは亡くなってから一年位してから、叔父が仕事していたSM誌の編集部で・・・首吊りでした」
 「そこまでしなくても、田舎に居辛いなら都会に出てくればよかったのに」
 「そうですよね、私もそう思います・・・でも繊細な人だったんです、田舎の人間関係には馴染めないけど都会にはもっと馴染めなかったんでしょうね、だって仕事の内容から言ったらこっちにいる方がいいじゃないですか」
 「確かに」
 「でも駄目だったんですね、叔父が精神的にバランスを取って生きていくためには色んな要素が不可欠だったんです、それが田舎に居づらくなって、私も追い出されるようにいなくなって・・・なんとなくわかります」
 「叔父さんのこと、好きだったんだ・・・」
 「愛情とはちょっと違います、でも初めての男性でしたし理想的なSMパートナーでした、先ほど『仕込まれた』という表現をなさいましたけど、ちょっと違うんです、相手が叔父でなくともいつか私は目覚めたと思うんです、私の開花を手伝ってくれた人、むしろ叔父に目覚めさせてもらって良かったと思います、私を丁寧に扱ってくれました、少しづつ、慎重に、注意深く開花させてくれたんです、すごく近しい恩人、そこに性的な意味合いが加わって、他人には言えない価値観を秘密で共有していた間柄・・・そんな感じでしょうか」
 「複雑だね」
 「ええ、私にも複雑すぎてよくわからないんです」
 「ところで今のパートナーと言うか、ショーの時の責め役の人、あの人は?」
 「叔父と仲が良かった人なんです、縄師として同じ雑誌で仕事をしていた人・・・叔父の首吊り以来辞めてたそうですけど私からお願いしたら復帰してくれて、ここのショーに出る時にもお願いしてるんです」
 「道理で・・・ベテランだし、こう言ってはなんだけどあの劇場で雇える人にしては本格的だと思った」
 「そうですね、安心して体をお任せできる人です」
 「ところで・・・考えたくもないだろうけど風営法の施行が目前だよね」
 「そうですね、そうなったらあのショーはもう・・・」
 「無理だろうね・・・その後どうする気?」
 「AVでやれるところまでやって、それからの事は考えてません」
 「まだ若いしOLとかは考えない?」
 「それは無理です、SM抜きでは・・・」
 「やっぱりそうなんだ、中毒みたいなもの?」
 「それもちょっと違います、例えばレーサーなら走らないではいられない、ボクサーなら闘わずにいられない、そんな感じだと思うんです、持って生まれた『業』のようなものでしょうか・・・何処かでもうこれでいいって気持ちになるかもしれませんし、一生止められないかも知れませんし・・・わからないんです、自分でも・・・ただ今は劇場でもう出来ないと言われるまでは続けますとしか・・・」

 叔父さんによる調教、故郷からの追放、叔父さんの自殺・・・かなり重い内容の話を淡々と、明るい表情で話してくれた陽子の目が初めて翳り、遠くを見つめるような目になった。
 Mとして生まれてきてしまい、それに起因する悲劇を次々と体験しながらも『これが私の業だから』と受け入れてきた陽子・・・その生き方全てが広義でのMなのかもしれない。
 その陽子の前に立ちはだかっているのが『法』・・・こればかりはどうにもならない。
 陽子の場合に限らず、みどりにしてもまり子にしても大きな影響を受けないわけには行かない事は明白だ。
 風俗で働く女たちを犠牲者と決めつけて、その人権を守る為に、と言う理由付けがいかに的外れで時代遅れなものか、腹立たしくなって盃を煽る俺に、陽子の明るい調子の声がかかる。
 「その回鍋肉、冷めちゃいますよ」
 「あ?うん・・・良かったら食べるかい?俺はちょっと飲みすぎてもうつまみの餃子だけあればいいや」
 「そうですか?じゃ、遠慮なくいただきます、明日の為にその1、食事はしっかり取ること、なんちゃって」
 空元気ではない、本当にそう思っているのは良くわかる、今を精一杯生きているからこそ彼女達は輝いているのだ・・・消え行く前の最後の輝きかもしれないが・・・。
 そうでない事を祈って俺は紹興酒をもう一杯注いだ・・・。


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