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衛星和誌 −Qカップ姉妹−
【SF 官能小説】

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ナディーカ語り(3)-1

 肘を曲げた右腕を振りながら歌う彼女をたしなめ、わたしは話を続けた。
「ジェニーや、このコンジャンクションが終わり‥‥条約の締結後になると思いますが、ナディーカは、フカリスとトゥーロパに巡幸しようかと考えています。今後のこともありますし‥‥。その際“マイデン”を使いたいのです。あのオイオの女たちも連れて‥‥。手配のほう、いろいろ、よろしくお願いします」
「は、わかりました」
 マイデンは、わたしお気に入りの巡洋艦の名だ。いまは軌道上にある。ただ、お気に入りというだけで、別にわたしの専用艦というわけではない。わたしが乗るとなれば、当然この護衛隊のジェニーが、そして他星まで出向くとなればメイドのリリアも、同乗することになるのだが、ジェニーは護衛隊所属であって、本来、巡洋艦に乗る立場ではない。だからリリアと同じ王室の人間という立場になるのだが、軍人である彼女の場合、逆に手続きが複雑になるのだ。まして、オイオの女たちも同乗させるとなれば、その管理の問題も出てくる。ジェニーに言った、いろいろ、は、そういった諸々の手続き、準備も含めて、という意味だ。王位の栄光とは、移動に際してさえ、この種の面倒がつきまとうものだ。逆に言えば、それほどの栄光なのだ。わたしは心のなかで、歌詞にない一節を詠いあげる。
(――スガーニーにレアンドラ市ありて、レアンドラにアグラウラ宮ありて、アグラウラにナディーカ姫ありて‥‥)
 わたしは、歩みをやめることはないだろう。
(すべてをコントロールできるようになるまで、ね‥‥。焦らないわ。目標へ、一歩一歩ゆっくりと。でも、着実に――)
 当座の目標ターゲットは、あのオイオの三人の女だ。
(特に、あの女戦士のカラダ――)
 わたしがいろいろ思いをめぐらせていると、リリアが戻ってきた。わたしはこのアグラウラでは唯一と言っていいカイメー様式の間に場所を移した。そう広くはないが、内壁も天井も、照明も飾られている物も、普段と異なる特別な部屋。気分転換にはもってこいの場所だ。そこで、お茶とお菓子をいただきながら、彼女の報告を聞くことにした。今ごろはオイオの三人、そしてあの調教士も、同じようにしているだろう。だが、後半三時間のこちらのメニューは、強力だ。
(勝つのはこのわたし、スガーニーの翡翠よ――)
 わたしの名はナディーカ。ナディーカ・ゲフィオニア・クセルクセス。“翡翠姫”の愛称でも知られている。スガーニーの王位に座る者にして、その中央政府下の全領を統べる者‥‥。しかし、悩みもある。
 胸が小さいのだ。

 わたしは胸が小さい。貧乳である。それが悩みだ。いわゆるバストサイズは、一〇〇センチメートルに達していない。カップは、Kカップだ。
 この木星圏の、豊乳が尊ばれる風潮、価値観を、なんとか改善したいと、わたしは常日頃から思っている。が、それはなかなかままならない‥‥。空港や発電所と同じように。
(いえ、もしかすると、それ以上かも‥‥)
 わたしは、またジェニーに気取られぬよう心中でため息をつきながら、頭痛の種を列挙した。
(ベルサビアにノーヴァヤ・ゼムリャ。――そして、オイオ‥‥)
 不意に、自分でも何故かはわからないが、そのオイオから来た女の笑顔が浮かんだ。あの、わたしよりはるかに高い上背を持つ女戦士の姿が。
 いや、あの女が浮かぶのはおかしなことではない。高身長は誰の目にも明らかなことだし、そして、あの、これ見よがしな爆乳が目に浮かぶのも、別におかしくはない。
(だが、なぜ笑顔が浮かぶのだろう‥‥。――う‥‥な、なんだか胸が、疼く‥‥。いや――)
 胸――というより‥‥。疼いているのは、わたしが小ささをコンプレックスに感じている、わたしのおっぱいではないか‥‥!
 ど、ど、どうしたというのだ、わたしは‥‥。初めての体験に、わたしはうろたえた。
(しっかりして、ナディーカ・クセルクセス――。あなたが手に入れたいと願っている女なのよ!)
 心の鏡に向かうように、わたしは自分に言い聞かせてみた。
(鎖にでも繋いで、みじめな姿にして‥‥思う存分、陵辱してやりたいと――‥‥)
 現在、わたしをもっとも苛立たせているのは、ベルサビア空港の拡張問題でもノーヴァヤ・ゼムリャ発電所建設への反対運動でもなく、オイオから来たあの女のはずなのだ。あの、一二七センチPカップという、許しがたい巨乳を誇示して、わたしのアグラウラに乗り込んできた――。
(そのはずが、どうして、なぜ、笑顔など浮かぶのだ‥‥)
 いや、わたしとて、巨乳は好きだ。だからリリィを手元に置き、愛でている。あのおっぱいは、魔乳と言うのにふさわしい、わたしの芸術品だ。
 だが、彼女のあれは、揉むためのものだ。転倒させた言い方をすれば、揉まれるためにいるのが彼女なのだ。わたしは、いまでは姉に劣らずPカップにまで発育したおっぱいを揉むために、あの娘を手元に置いている。わたしのペット。可愛い可愛い乳奴隷として。


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