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デスカンパニー
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デスカンパニー2-1

久しぶりの…いや十何年ぶりの我が家は東城の心を締めつけた。
自分の部屋は昔のままだった。居間も廊下も。
すべてが時間の経過を拒否するように止まったままだった。
だけど、自分の残された時間はあと2日。
今までたくさん浪費してきた。 未来なんてどうでもよかった。 先のことなんて考えられなかった。
家族に打ち明けるべきだろうか?
いや、これ以上迷惑はかけたくない。
どのみちあと2日だ。
タイマーはどんな時も正確無比だ。
時間は無限にあるように思っていた。 持て余す価値のない時間が残りわずかになった時、その価値は急騰する。
そもそも価値ってなんだ? 死までのカウントが長いのが幸せなのか?
死にたくない。
自分の欠片を失いたくない。
怖い。
本音は理性に覆い隠せない。
あと2日、どう生きる? あと2日に意味があるのか?
自問自答を繰り返した。
そんな時、父が部屋に入ってきた。
「久しぶりに釣りにでもいかんか?」「おまえもしばらく見ない間に老けたな。少し痩せたんじゃないか?」
海を見ながら父は語り掛けた。
東城は無言のまま、海を眺めた。
東城の変化を察して父は続けた。
「おれはこの海が好きなんだ。だいたいは激しく荒れ、時には人の命までも飲み込んでしまう。厳しい海がな。世界とつながっている。人に命を与えてくれてる。ここに立つと自分がちっぽけな存在に見えてくる。
ちっぽけながらも懸命に生きる。だから今の痛みや悩みもちっぽけながらかけがいのないもんなんだって思う。
まぁうまく言えないが、困ったらいつでもここに戻ってこい。おれはいつもおまえの味方だから。」
父は淋しそうに微笑った。
東城は小さな聞き取れない声にせいいっぱいの感謝を込めて
「うん。」とつぶやいた。
気が付かなかったが、涙があふれてきて、あわてて拭いた。
あっという間に時はたち、現実が東城を今置かれている状況を明示した。
時間がない。
タイマーを見るとあと3時間あまりに迫っていた。
煙草に火を付け、ため息のような息と煙を吐き出した。
3時間後に自分はどうなるのか? 自分が自分であるという意識はやはり断たれてしまうのか。消滅してしまうのか。
わからない。
見えない恐怖が東城を飲み込もうとしている。
今までのことを静かに振り返り、
苦笑して煙草の火を消した。


時間だ。 あと僅かで消えてしまう。
!?
そのときタイマーから、人型のホログラフが浮かび上がった。
「東城よ。今からおまえの生を奪わせてもらう。この瞬間より、おまえはおまえではなくなる。」
!?
痛みもなく、あっという間の出来事だった。
ホログラフは東城から、魂と思われる光の光体を引き抜いたのだった。
意識が遠退く。
「…だ……わ…な…い……」
ホログラフは何かを伝えようとしていたが、薄れゆく意識の中で聞き取れず、重くなった瞼を閉じた。
人生も幕を閉じるのか
……………………!?
激痛に東城は瞼を開けた。ここがあの世なのか?それとも……
まわりを振り返るとさっきまでいた、死を迎えた場所に東城は倒れていた。

っ〜おれは何をしていたんだ? 頭が割れるように痛い。
!?
思い出せない!
おれが誰かも、何をしてるのかも……
立ち上がり窓に目をやり、東城は凍り付いた。


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