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蒼虫変幻
【SM 官能小説】

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蒼虫変幻-2

湖の奥からゆるやかに吹いてくる微かな風の息づかいにしっとりとした髪をなびかせた彼女は、
水面に目を向けながらぼんやりと思いに耽っていた。彼女は、愛くるしいほどの顔に、どこか
うっとりするような潤みを含んだ瞳をしていた。初めて会った年上の女の人だというのに、ぼ
くは不思議に彼女に深く魅了されていく。いや、魅了されるというより、胸奥をひたひたと息
苦しくさせるのだった。


煙草を吸ってもいいかしら…と小さく呟いた彼女に、いつもはボートの上での喫煙は禁止され
ていますが、今日は特別にいいですよとぼくが言うと、彼女はにっこりと笑い、小さなバッグ
の中から取り出した煙草を薄い唇に咥える。

胸元がわずかに乱れた病室着からゆったりとした白い乳房の谷間が覗かせている彼女は、すら
りとした脚を組み、物憂く湖の景色を見つめながら煙草の煙を薄く吐く。女の真向いでボート
を漕ぐぼくは、じっと彼女の姿に視線を這わせていた。

淡く彩られた黄昏の光の中で、彼女の薄い唇から洩れる甘いため息だけが、ふと聞こえてきた
ような気がしたとき、彼女の衣服の下の真っ白な裸体が眩暈のようにぼくを襲ってきた。目の
前の彼女の乳房や淡い陰毛に包まれた性器が、不吉で酷薄な悪夢のようにぼくのからだの中に
ゆらゆらと浮遊し始めたのだ。



あの療養所が、かつてどんなところであったのか、ぼくは幼い頃祖父から聞いたことがあった。
山の斜面の険しい道を登り、まるで洞窟のように鬱蒼と茂った樹木に覆われた小路を抜けると、
谷間に古びた煉瓦造りの建物が建っていた。

戦争中は数十人の女の囚人たちが監禁された牢獄だったらしいが、戦争が終わった後は使われ
ることもなく、いつのまにか建物は朽ち果てていったという。シダが絡まった高い塀で囲まれ、
古びた窓には錆びた鉄の格子が嵌められていた。

そして、誰もいなくなったこの建物の裏手にある塔には、今でも狂人の女囚が亡霊に監禁され
ている恐ろしい場所だ…と、死んだ祖父はそう言い放ち、ぼくに対して決してその建物に近づ
かないようにいつも呟いていた。

祖父が亡くなったあと、その古い建物が改装されて今の療養所となったのは五年ほど前だった。
ただ、建物の裏手にある石造りのサイロのような塔の建物は以前のままだった。



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