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和州道中記
【その他 官能小説】

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和州道中記-2

「起きたか」
昨日と同じように、良い天気の朝。
竜胆はいつもと同じように紙を結い上げながら、一紺を見やった。
「…お前はいつも眠そうだな」
そんな竜胆の言葉に苦笑交じりで答える一紺。
「低血圧やねん」
(まさかお前が原因、なんて言えるわけない)
眠たげに眼を擦り、一紺は布団をたたむと何気なしに竜胆に問う。
「なあ、お前は男とか女とか…分からんのか?」
「はあ?」
「だからな、男と女ってもんをどう思うかって…」
「下らないこと言ってないで、さっさと支度しろ」
返って来たのは、色気も素っ気もないそんな答え。
(こら、あかんわ…)
一紺は大きく溜息をつくのだった。


「良い天気やなー!」
青空の下、山道を歩く二人。
一紺が伸びをしながら言った。竜胆もこの見事な青空に自然と笑みを浮かべる。
「これで山賊に遭わなければ良いんだけどな…」
「せやな、たまにはのんびりと――…」
そう言った矢先であった。

一紺が腰の刀を構える。竜胆も、得物である短刀を取り出して道を阻む男達を睨み付けた。
小汚い覆面の男達は、おそらく昨日の山賊の仲間。
仇討、と言うことだろうか。
「…昨日で分かったやろ?戦っても無駄や」
一紺は呆れ混じりに言った。しかし、それで退く山賊達ではない。
ひとりの男が、二人ににじり寄った。黒の長髪を靡かせて、覆面から鋭い眼光を覗かせる。
「…一紺」
竜胆が言い掛けた言葉に、一紺は頷いた。
「分からんのやったら、教えたるわ」
言うが早いか、一紺は刀を男に向けて地を蹴った。素早くそれを振り上げ、男に向かって斬り付ける。
「?!」
手応えはない。男は一紺の攻撃に勝る素早さで攻撃を避けたのだ。
次は男の攻撃。一紺は突き付けられた短刀を軽く交わして、別の男に的を絞る。
がむしゃらに繰り出して来る刀を鮮やかに避けて、一紺はまず一人斬った。
頭の手拭が倒れ伏した男の上に落ち、血で赤く染まる。
竜胆も短刀で相手の腹を刺し、頭部に手刀を入れて気絶させた。
そうして、五人いた山賊達はたちまち長髪の男を含めた二人になってしまった。

「…いい気になるなよ」
それまで何事も喋らなかった長髪が、急に言葉を発した。男は背後に立っていた竜胆の方を向く。
竜胆がぎくりと身体を強張らせた。
男の短刀を何とか交わすと、竜胆は己の短刀を相手の腹に向かって突き出した。
「あッ!?」
しかし、その細い腕は別の男の手に掴まれる。別の山賊が草陰に隠れていたのだ。
長髪は竜胆のもう一本の腕を掴むと、力を入れて捻り上げた。
「あう!」
「動くと折れるぞ」
男の言葉に歯噛みする竜胆。気付けば、彼女の周りを何人もの山賊達が取り囲んでいた。
(こいつ等…!)
ようやっと彼女の異変に気付いた一紺は、迫り来る攻撃を交わしつつ叫ぶ。
「竜胆!!」
山賊達の攻撃を受けていて、竜胆を助けに行けない一紺も悔しげに歯噛みした。
ふと、気付けば山賊達の数が増えている。五人だったのが、十数人に…。
しかし一紺は怯むことなく、容赦なく山賊達を斬って行く。

…暫くもすれば、その場に立っている山賊達は二人だけになった。
流石に息を切らせる一紺であったが、竜胆の姿がないのを見て取ると残った二人を物凄い形相で睨み付ける。
「ひ、ひぃいッ」
逃げ出す二人の山賊達を捕まえて、一紺は一人を足で押えつけ、もう一人の喉元に刀を突き付けた。
「おい、俺の相棒はどこや!?」
「お、女なら…ひッ!ア…アジトかと…」
(くそ…!こいつ等最初から竜胆狙いか!攫て何さらす気や!?)
一紺は突き付けた刀に力を込める。
「アジトってのはどこやねん!?」
「へへ…どこでしょうね…」
笑い誤魔化す山賊の喉元を、一紺の刀が貫いた。
足元の山賊は、ひッと声を上げる。
「お前は喋ってくれんのやろ?」
「……は、はいぃぃッ」
かくかくと山賊は頷いた。


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