投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ミロスラワの場合
【アイドル/芸能人 官能小説】

ミロスラワの場合の最初へ ミロスラワの場合 0 ミロスラワの場合 2 ミロスラワの場合の最後へ

心閉ざした少女-1

ミロスラワのことは、学校中の皆が知っていた。喧嘩になれば男とも殴りあい、倒れて動けなくなっても決して負けたと言わない気の強い女子。曲がったことが嫌いで、不当な出来事には一人で突っかかっていく無鉄砲。徒党を組まず、友達もいない変わり者。
無表情のことが多く、大抵の生徒には、学年を問わず恐れられていたし、いわゆる不良グループからは敬遠されていた。教師ですら、声をかけるのを憚っていたくらいだった。ただ、実際にミロスラワのほうから何かされたという者は皆無であった。人を寄せつけないその雰囲気が、恐ろしそうな先入観を浸透させていたのだった。
その姿からすれば、ミロスラワはむしろ美しい少女だと言えた。十四歳になったばかりだったから、女らしい体つきには遠かったが、真っ白い肌にすらりとした体型、濃い金色の、肩より長い髪、赤茶色の瞳、はっきりしているのに甘やかな声質、よく見ると柔らかい印象を与える目鼻立ちなどは、ミロスラワを知らない道行く男子の気を惹きつけてやまなかった。
ミロスラワについては、しかし、実態のよく分からない或る噂があった。しかも、実態を知っている者は、本当は数多くいるらしいのだった。
この意志の強い少女は、幼い頃から繊細な心を持っていた。そしてその繊細さに自分で苦しんできたものだった。道でかたつむりが踏まれても、遠くの悲惨な事故をテレビで見ても、胸を射られたように辛くなった。目や耳にした不幸に泣いて過ごす日が繰り返された。そして、六年生の時、父が死んだ。余りの苦しさに、少女は感情の枠組みを意志で固定してしまった。それは、幼い少女なりの筋の通し方ではあったけれど、詰まる所、周りとの関係を考えずに断つ、一つの自己中心的な態度であった。このような不自然な気持ちの固めかたは、生きることを既に歪めているのであって、いつか少女の人生には破綻が訪れるだろう。人は心を開いている範囲でしか進歩できない。若すぎるミロスラワの人生が、ほんの偏った世界にしかもはや開かれていかないのだとしたら、それは余りに惨いではないか。しかし、心の緊縛を強いているのはミロスラワ自身であったし、それは習慣として身に付いてしまっている。何か新しいことが少女の身に起こるべきであった。
毎週水曜日の朝七時半にミロスラワは下駄箱の中を確認した。左の上履きにときどき手紙が入っている。手紙は一通のこともあれば、複数のこともあった。内容を見て、ミロスラワは差出人に会うかどうか決めていた。この時間に外れた手紙は全て無視された。
差出人は男に限られていた。幾度か女の手紙が入っていたこともあったが、ミロスラワのほうで取り上げなかった。男の恥が真剣に、赤裸々に訴えられているとミロスラワが心に感じた場合にのみ、差出人は返事を受け取ることができた。いたずらで手紙を書いてくるような度胸のある者は、上の学年にもまず居なかった。


ミロスラワの場合の最初へ ミロスラワの場合 0 ミロスラワの場合 2 ミロスラワの場合の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前