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ヌードモデルは堕落のはじまり
【調教 官能小説】

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ビデオと脅し-2

 振り向くと、そこにはキモ豚が立っていた。
 ねとねとと脂ぎった顔。しわだらけのシャツの肩には大量のフケが散っている。
「お疲れさん、桃井。まさかあんな場所で教え子と再会するとはなあ。先生、昂奮したぞ」
 キモ豚は喋りながら勝手に早紀のとなりに座った。その口角には唾液の泡がついている。

「あ、あたし、もう帰るんで……」
「待て。いま来たばっかりだろう」
 立ち上がりかけた早紀の腕を、すかさずキモ豚が掴んだ。べったりとした感触に、早紀は鳥肌が立った。
「ぜひ桃井に見てほしいものがあるんだ。びっくりするぞ」
 そう言ってキモ豚はずた袋のような鞄を漁りはじめた。
 早紀は厭な予感がして、そのようすを見守る。
「ほらよ、これだ」
 キモ豚が取り出したのは、デジタルビデオカメラだった。

「ビデオカメラ……?」
 早紀の心臓はばくばくと騒いでいた。話の続きを聞くのが恐ろしくてたまらない。
「鞄のなかにカメラを仕込んで撮影していたんだ。ほら、こうやると――」
 キモ豚が動画を再生した。液晶に映し出された映像を見て、早紀は叫びそうになり、あわてて口を手で押さえた。ちいさな液晶のなかで動いている肌色のもの――それはさっきまでの自分だった。男たちの前で服を脱ぎ、肌を晒した自分――。
「なかなかよく撮れてるだろ。お、ブラジャーを外した。ぷるるんおっぱいのご開陳だぞ」
 映像のなかの早紀は、涙ぐみながら乳房を露出しようとしていた。さっきまでのあの恥ずかしさが甦る。
「おおー、ピンク乳首!」
「やめてください」
 早紀は液晶から眼を逸らし、震える声で懇願した。
「なんだよ、自信があるから脱いで見せびらかしてるんじゃないのか? 趣味と実益を兼ねたアルバイトなんだろ、ヌードモデルは」

 ふいに視線を感じて、早紀は周囲を見渡した。後ろのテーブルの男が、身を乗り出してビデオカメラのちいさな液晶を覗き込もうとしている。かっと肌が熱くなった。
「やめてください。ほかのひとが見ています」
 小声で再度頼んだ。
「見せとけ見せとけ。見られて嬉しいだろ。どうだ、このあと先生のうちに来ないか? これを大画面テレビで鑑賞しよう」
「厭です! この動画、消してください! お願いします!」
「うーん、せっかくきれいに撮れたんだけどな。しょうがない。うちに来たら消してやる」
 言われたとおりにキモ豚の家についていったら、なにをされるか――想像するのもおぞましかった。服を脱ぐところを再現させられて、肌に触れられて、もしかするとそれ以上のことを――。
「ぜったいに行きません!」
「うちに来ないと、これをお前の同級生たちに見せるぞ」
 早紀の思考はぐらぐら揺れた。

「いいんだな、みんなに見せて」
 ――こんなの、ただのハッタリ。脅しにすぎない。
 早紀は怖じ気づく自分をなだめて、毅然とした態度を続けた。
「知りません、勝手にしてください」
 キモ豚をきつく睨みつけて立ち上がった。出口に向かって悠然と歩き出す。だがその脚は震えていた。
「桃井! 来週のストリップも期待してるぞ!」
 早紀の背に向かって、キモ豚は大声で呼びかけた。
「え、なに? ストリップ?」
「あの子ストリップ嬢なの?」
「いまどきストリップ小屋なんてあんの?」
 周囲でざわめきが起こる。いっせいに集まった店内の視線が怖くて、恥ずかしくて、早紀は駆け足で店を出た。


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