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ヌードモデルは堕落のはじまり
【調教 官能小説】

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プロローグ-1

「京佳先生、お願いします。すっごく困ってるんです。なんでもしますから!」
 大学の個室で桃井早紀はふかぶかと頭を下げた。京佳先生は早紀の後頭部を一瞥すると、ふんと鼻を鳴らしてパソコンのほうへ向き直った。
「授業に出なかったほうが悪い。しかも一般教養なのに四年まで単位残しておくなんて。四年間なにやっていたの」
「もう就職決まってるんです、たった二単位なのにこれで卒業できなかったら……」
 早紀は半泣きになって京佳先生にすがる。二年のころに履修したものの出席日数不足で落とした、美術史の授業。単位は足りているから問題ないと思っていたのに、計算違いで卒業できないことが四年の冬になって判明したのだ。春から銀行で一般職として働くことが決まっているのに。

 京佳先生は腕を組み、考え込む姿勢を取った。早紀は上目遣いで先生を見つめる。京佳先生の猫に似た鋭い双眸がきらりと光った。
「なんでもするって言ったよね?」
「はい」
 こくこくと頷いた。
 京佳先生は長い髪を耳にかけ、ゆっくりと早紀の顔を見る。
「……ほんとうに、なんでも?」
「はい! なんでもやります!」
 早紀はぱっと顔を輝かせて、勢いよく言った。
「そうね――私が講師をやっているカルチャースクールの絵画教室で、モデルをさがしてるの。いままでお願いしていたモデルさんが産休に入っちゃって。毎週土曜日、週一で三ヶ月間。どう?」
「モデル? 突っ立ってるだけでいいんですか? それで単位もらえますか」
「ただし、裸婦デッサンの授業よ」
「裸婦……?」早紀ははっと怯えた顔になる。「それって、もしかして、ヌードですか?」
「そうよ、ヌードモデル。大勢の前ですっぽんぽんになって絵に描いてもらうの」
 京佳先生はこともなげにそう言った。

「無理です、ヌードになるなんて!」
 早紀は叫び声に近い声を上げた。
「あなた、まさか処女じゃないでしょ? そんなに抵抗ある? 裸になるぐらいで」
「確かに処女じゃないですけど、でも……」
 じつをいうと、早紀は華やかなルックスのわりに恋愛経験は乏しかった。裸を見せたのは、前の彼氏ひとりだけ。その彼氏だってつきあっていたのはほんの短い期間だ。バイトの先輩だった彼に言い寄られてつきあうことになり、処女を捧げたものの、あまり好きになることができなくて早紀から別れを告げた。

「厭ならいいわよ。残念ね。もう一年間、学生生活頑張って」
 話はこれでおしまい、とでも言いたげに、京佳先生はデスクチェアをくるりと回転させ、パソコンのマウスを握った。早紀はくちびるを噛みしめ、その場に立ち尽くす。
「……どうしたの? 用事が済んだなら早く出て行って。忙しいんだから」
 早紀はいったん口を開いたが、言葉を呑み込んだ。足が震えている。――やっぱりヌードモデルなんてできない。そんなのぜったいに無理。そう思ってかぶりを振った刹那、就職活動の記憶が甦った。何十枚も書いたエントリーシート、面接での値踏みするような視線と意地の悪い質問、「今後のご活躍をお祈りいたします」と書かれた不採用通知。早紀の目頭がじわっと熱くなった。

 ――せっかく掴んだ内定、手放したくない。留年したら、来年はもっとつらい就職活動になる。いやらしいバイトじゃなくて、芸術目的なんだから。

「……ヌードモデルの件、受けます。よろしくお願いします」
 震えてかすれる声で早紀は言った。

 京佳先生は振り向き、くちびるの端だけで満足げに笑う。
「三ヶ月間、よろしくね。モデルさん」


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