投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

籠鳥 〜溺愛〜
【女性向け 官能小説】

籠鳥 〜溺愛〜の最初へ 籠鳥 〜溺愛〜 58 籠鳥 〜溺愛〜 60 籠鳥 〜溺愛〜の最後へ

19章-2



 そう訊ねてくる高柳の声が遠くに聞こえる。

 美冬はもう一人の人物から目を逸らせなかった。

「こんな、子供を――?」

 そう訝しげな表情をした初老の男性は、鏡哉と瓜二つだった。







 高柳に支えられリビングのソファーへと促される。

 美冬の向かいに腰を掛けたその人物は、自分の名を名乗った。

「新堂 鷹哉、鏡哉の父だ」

 鷹哉の後ろに立った高柳が言うに、鏡哉が社長をしている会社とは新堂グループの中の数個の会社で、鷹哉はそのグループの代表取締役にあたるという。

 そんな説明を呆然と聞きながら、美冬は自分のつま先を見ていた。

「……鈴木、美冬です」

 消え入りそうな声で自己紹介した美冬には、俯いていても鷹哉がこちらを見つめているのが分かった。

「高校二年生だそうだね。と言っても、高校は退学するつもりらしいが」

「………」

 凛と響く鷹哉の声に、美冬は静かに頷く。

「単刀直入に言う。鏡哉と別れてくれ」

 いきなり言い渡された言葉に、美冬の肩がびくりと震える。

「会長!」

 口を挟もうとした高柳を、鷹哉がぴしゃりと抑える。

「お前は黙っていろ」

「………」

 口をつぐんだ高柳を尻目に、鷹哉は口を開く。

「一年半、一緒にいたらしいな。私は全く気づいていなかった。あれはめったに実家に帰ってこないからな」

 こいつは初めから知っていたらしいが、と後ろの高柳を一瞥する。

「君のような18歳にも満たない子供を……いったいどういうつもりで――」  

 鷹哉はそうひとりごちて、大きく息を吐いた。 

「半月前までは高校に通っていたのだろう、なぜ辞めようとする?」

「………」

 急に自分自身に質問を振られ、美冬はぐっと答えに詰まる。

 じっと押し黙る美冬に代わるように、高柳が口を開く。

「取締役……おそらく鏡哉様は美冬ちゃんを軟禁していました」

 軟禁という言葉に、美冬がさっと顔を上げる。

「軟禁……だと?」

 鷹哉の顔が厳しく歪む。

「………っ」

 違うと否定しようとするのに、喉が詰まったように声が出ない。

「そうなんだろ、美冬ちゃん」

 高柳が美冬の近く寄り、膝を折った状態で覗き込んでくる。

 ふるふると必死に首を振る美冬の鼓膜を「馬鹿な……」という鷹哉の声が震わせた。

「軟禁――? あいつが、そんな――」

 額に片手を付いて愕然とした表情をした鷹哉に、美冬は首を振ることしかできなかった。

「………っ!」

(違う、違う、私が、望んだ――

 心の根底で私が望んだことを、鏡哉さんが実行しただけ!!)

 三人の間に、重苦しい沈黙が下りた。

 美冬が首を振るさらさらという髪の音だけがしていた。

 なにが本当で、何が嘘なのか、混乱して分からなかった。

 沈黙を破ったのは、鷹哉だった。

「申し訳ない……本当に申し訳ない!」

 ソファーから立った鷹哉は、あろうことか美冬の目の前で深く頭を垂れた。

「………!」

 いきなりの事に美冬は目を丸くする。

「あいつの犯した罪は、親である私の責任だ」

「謝らないでください!」

 気が付くと美冬は泣き声のような声で叫んでいた。

 その声に鷹哉がはっと面を上げる。

「や、やめて、ください……私も、望んだんです。鏡哉さんと、一緒にいたいって、そう望んだんです――」

 頬を熱い涙が零れ落ちていく。

 泣いたってしょうがないのに、涙が溢れるのを止められない。

「……鏡哉が君を軟禁してしまった理由について、私は心当たりがある」

 鷹哉がおもむろに口を開いた。 

「鏡哉は小学生の時、親族のものに性的虐待を受けていた」

「………………」

(……今、なんて――?)

 ほうけた様に自分を見返してきた美冬から、鷹哉は苦しそうに目を逸らす

「発覚するのも早かったしカウンセリングにも通わせたから、中学生のころは立ち直った様だった。だが――」

 鷹哉がそこで言葉を区切る。

「アメリカの大学に留学している時、中学時代から付き合っていた鏡哉の従妹が事故で亡くなった」

「………っ!」

 美冬の胸がずきりと痛む。

 両親の墓参りに行った時の鏡哉の表情を思い出す。

 どこが、ここではない遠くを見つめる目。

 あれは亡くなった彼女を見ていたのだ。



籠鳥 〜溺愛〜の最初へ 籠鳥 〜溺愛〜 58 籠鳥 〜溺愛〜 60 籠鳥 〜溺愛〜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前