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「運命の人」
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運命の人〜白雪王子〜-4

「ほ、ほら!味見したら別にまずくもなかったし、早く食べようよ。冷めちゃうよ。」

付け足すようにいただきますと言って、箸を取る。恥ずかしい自分に踏ん切りをつけるため、あえて別な行動をしたのだった。
一応、うどんをつまみ息を吹きかけて、口に入れるとぬるかった。だけども、味はしみていてこれはこれで美味しい。塔也君のお口に合うかが心配になり、ちらちらと様子をうかがう。
彼は行儀良くいただきますと言って、ようやく食べ始めた。口に入れるまでがとても窮屈に感じながら、食べる姿をじっと見る。
口に入れると、彼は口だけを動かしてこれと言った反応を見せなかった。無理して美味しいと言ってくれることを予想した私は、寂しさを覚えた。
すると、彼の目尻から素早く一滴が零れ落ちていった。

「えっ!そんなにまずかったかな?」
「違いますよ!」

彼の投げやりでそれでも固い否定により、私の動揺は別にいった。
彼は視線を横に、気まずそうにする。

「夏木先輩の手づくり、あんまり嬉しくて。それに、ひどいことしたのに優し過ぎるのが痛いから。本当なら、嫌われて犯罪者と罵られるのが普通なのに。」

そう言うと、彼はまたうどんをずるずると食べていく。結構な早さでうどんが少なくなる。
…照れてるのかな?

「塔也君。」
「はい。」
「インフルは一週間近く続くけど、その間ご飯とか掃除洗濯やってあげるから。」

塔也君は一旦箸を止めたが、また動かし始めた。
私も、うどんを音を立てずに口に入れていく。何故だか、場違いのような味がするのは気のせいかなと思いつつ。

食べ終わって、私は食器洗いをしていた。料理の時も思ったけど、狭い台所で食器洗いとなるとちょっと窮屈だった。
塔也君には寝てるようすすめておいたから、今頃は寝ているだろうなと思った。
食器洗いを終えて近くまで行ってみると、やはり彼は寝ていた。
改めてこの寝顔を見ると、綺麗で何もかも忘れてしまえた。熱があるからか、少しほてった顔が変に色気を匂わせていた。

「きっと、モテてたんだろうなぁ。私なんかで本当にいいの?可愛くないよー?」

案の定、返事はない。
この美しいのをどうやって例えよう。

「そだ、白雪姫。…男の子だけど。」

事実、白雪姫と呼ぶにはふさわしい。ただ美しいだけでなく、この無垢で幼さを見せるような可愛らしさを折角だから含めたかった。
私は、あっと声を上げてもう一度寝顔を直視する。

「白雪王子………かな?」

白雪王子の寝顔を、またしばらく眺めて時間が過ぎていった。


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