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美少女・三原レイ
【その他 官能小説】

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カミングアウト-2

いつものように中野駅からJR中央線・高尾行きに乗った。車内は混んでいた。高円寺駅を過ぎたあたりから、レイは奇妙な感覚に捕らわれていた。誰かの視線を背中に感じる。

レイは車両の真ん中あたりで立っていた。左方向から誰かに見られていると、感覚的にわかった。
左には、スーツ姿の男、女子高生、OLなどがいた。制服姿の女子高生と目が合った。瞬間、相手は目をそらせた。

(同じ高校だわ)

肩まで伸びている黒髪。少し、厚みがあるくちびる。右手首には黄色と緑のミサンガ。目は切れ長。その目の印象からか、なんとなく、淋しげな顔立ちをしていると思った。

彼女がレイを見ていたのだろうか。部活での繋がりはない。校内で話したこともない。〈見ていた>というのは、思い過ごしかもしれない。

電車は荻窪駅に着いた。彼女のほうがドアに近い場所だったので、先に降りていった。レイがホームに降りると、階段に向かって歩いていく彼女の後ろ姿があった。



レイの高校、荻窪東は荻窪駅北口から徒歩7分。杉並区の天沼(あまぬま)というところにあった。初冬の風は冷たい。80デニールのストッキングを穿いていてもひんやり感じる。

(明日から110デニールのストッキングにしなくちゃ)

青梅街道に入って杉並公会堂の手前を右に曲がったところで、後ろから「三原さん」と声を掛けられた。電車の中で見た女子だった。

「はい?」

「わたし……二年の岡本絵美里です。よろしく……」

「はい……」

絵美里(えみり)は、三原レイと並んで歩く。頬を紅潮させていた。

(気恥ずかしそうにしている……。何が言いたいのだろう?)

「わたし……あなたのことが好き……」

「えっ?」

たおやかな風の中、絵美里の言葉が宙を舞った。レイは返す言葉もなく、ただ、とまどうだけであった。

「名刺、受け取ってくださいますか?」

名刺? 受け取るべきなのか。どのように答えれば?

まるで魔法に掛けられたように、レイは名刺を受け取っていた。

「レイさん、よかったら、連絡ください」

「はい……考えてみます」

咄嗟に『考えてみます』と言ってしまったが、何を考えればいいのだろう。

「新体操しているレイさんも素敵だけど、ふだんのレイさんも素敵……」

絵美里は切なげに呟いた。レイは困惑する。

荻窪東高校の正門が見えてきた。絵美里は二・三歩、前に出て「じゃあね」と、手を振って、そして小走りになって正門を越えていった。

荻窪東高校・テニス部

岡本絵美里

レイは、電話番号とメールアドレスが印刷されている手の中の名刺を見つめて、ふーっと小さく、息を吐いた。



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