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籠鳥 〜溺愛〜
【女性向け 官能小説】

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5章-3


「なに? 社長と二人きりになりたくないとか?」

 ドキ。

(こ、この人、するどすぎる)

「喧嘩でもしたの?」

「け、喧嘩なんてしたことないですよ」

「じゃあ、好きになっちゃった?」

「………っ!?」

(な、な、なんで知って――!?)

 真っ赤になった美冬を見て高柳がくっくっくと笑い出す。

「素直だなあ美冬ちゃんは。社長もこれだけ素直ならいいのだけど――」

 最後のほう、ぼそりと呟いた高柳は少し困った顔をしていた。

「……高柳さん?」

「美冬ちゃん」

「はい」

 いきなり真面目な顔で見つめてきた高柳に、美冬はなんだろうと背筋を伸ばす。

「僕は美冬ちゃんの味方だから。何かあったら遠慮せずに相談するんだよ」

 その表情が本当に真剣で、美冬の心に何か違和感が残る。

「え……?」 

(高柳さん……?)

「ほら、着いたよ」

 高柳が発した通り、リムジンはマンションのエントランスへと横付けされていた。

 外からドアマンにドアを開けられ、美冬は慌てて降りる。

「じゃあね」

「あ、はい。ありがとうございました、送っていただいて」

「うん」

 高柳はそう言って車を出させた。

 そのリムジンを見送りながら、美冬は首を傾げる。

「……高柳さん、何しに来たんだろう?」

 ぼんやりとエントランスに立ち尽くした美冬に、ドアマンが「鈴木様?」と心配そうに声をかけてくる。

「あ、何でもないです。ただいま帰りました」

 美冬はそうドアマンにいつも通りの挨拶をすると、マンションの中に入っていった。  



  
  
 スーパーでゆっくり買い物をし何とか気持ちを落ち着けた美冬は、深呼吸をしてマンションの部屋に帰った。

「た、ただいま帰りました」

 部屋にいるだろう鏡哉に聞こえるよう、挨拶するが少し声が震えてしまう。

「お帰り。ってこら、買い物したものはコンシェルジュに運ばせればいいって言ってるだろう?」

 キッチンに入った美冬を見るなり、鏡哉がリビングのソファーから立ち上がり近づいてくる。

「え、で、でも今日はそんなに重くないし、自分で運んだほうが早いですし」

 そう言い訳した美冬に纏わりつくように、鏡哉がいつも通りくっついてくる。

 近づかれるにつれ、美冬の鼓動がどくどくと加速する。

(ひ、ひゃ〜〜っ! お願い、これ以上近づかないで)

「美冬ちゃんの細くて綺麗な腕が筋肉ムキムキになったらいやだ」

 白いセーラー服の袖の上からさわりと二の腕を触られ、美冬は手にしていたリンゴを床に落としてしまった。  

 鏡哉がリンゴを取ってくれる。

「ほ、ほら鏡哉さん、私忙しいですから、向こうに座っていてください」

「美冬ちゃんどうしたの? リンゴみたいに真っ赤」

 腰を折るようにして顔を覗き込まれ、美冬の頬はさらに熱くなる。

「な、何でもないです」

「熱でもあるの?」

 当たり前のように手を伸ばして額に触ろうとした鏡哉に、美冬は後ずさりをする。

「なんで逃げる?」

「に、逃げてなんか、ないですよ」

「いや、後ずさりしてるじゃないか」

「こ、これは――」

 いくら広いキッチンとはいえ、後ずさりした美冬の背に冷蔵庫が当たる。

「なんか、逃げられると追い詰めたくなるんだよね」

(ひ、ひい!)

 伸びてきた手に、美冬は思わず瞳をつぶる。

 ひやりとした掌がおでこに当てられた。

「熱はないか。真っ赤だけど」

 ちゅっと頬にキスが落とされる。

(ぎゃっ!?)

 美冬は乙女らしくない叫び声を心の中で上げる。

 それほどもう彼女はいっぱいいっぱいだった。

 鏡哉の香水の香りが鼻孔をくすぐり、美冬は瞼を開いたその時、

「今度逃げたら、美冬ちゃんのファーストキス、奪っちゃうよ」

 美冬の耳元でそう呟いた鏡哉は顔を離すと、彼女の目の前で意地悪そうに嗤いその場を去って行った。

 一人取り残された美冬は、ずるずるとその場にへたり込んでしまう。

 壊れそうなほどどきどきする心臓がうるさい。

「………っ」

(え、Sだ……鏡哉さん、絶対Sだ――!!)

 今更知りたくなかった鏡哉の性癖を知らしめられ、美冬は盛大なため息をついた。







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