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籠鳥 〜溺愛〜
【女性向け 官能小説】

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5章-2


「社長、嬉しいのは分かりますがあまり美冬ちゃんに無理をさせてはいけませんよ。彼女はまだ高校二年生なのですから」

 高柳の忠告に鏡哉が顔を上げる。

「……はあ? 何言ってるいるんだお前」

 鏡哉は眉間に薄くしわを寄せ、こちらを伺ってくる。

「またまた。私には隠さなくても大丈夫ですよ。美冬ちゃんと付き合うことになったのでしょう?」

 単刀直入にそう言ってやると、鏡哉はメガネの奥の切れ長の瞳を歪めた。

「お前……俺をロリコンにしたいのか?」

「………え?」

 あまりにも意外な答えに、高柳は言葉に詰まる。

 冗談かと思い鏡哉を見つめなおすが、本人はいたって真面目な表情だ。

「え……美冬ちゃんと付き合っているのではないのですか?」

「だから、なぜそうなる?」

「………」

「私は美冬の保護者だぞ。美冬に欲情してどうする」

(え、ええええええ〜〜〜っ!?)

 鏡哉の答えに高柳は絶句する。

(じゃあなぜあの時、ウォークインクローゼットであんなことをしていたんだ?)

 あの時、鏡哉を急な会合でマンションへ迎えに行った時、高柳はクローゼットのすぐ傍で(一応悪いとは思いながら)一部始終を見聞きしていたのだ。

 初めて見る鏡哉の蕩けそうな笑顔。

 愛おしそうにキスをし、美冬を抱きしめる姿。

 どう見てもそれは付き合い始めの男女にしか見えなかった。

「……では社長、もし私と美冬ちゃんが付き合うことに――」

「殺されたいのか?」

 言いかけた高柳を即座に遮った鏡哉からは、明らかに殺意が感じ取れる。

「では、社長には他に付き合っている女性がいらっしゃるのですか?」

「いる訳がないだろう。私には美冬がいるのに」

「………」

(うわあ……『無自覚さん』だ、この人――!!) 

 高柳は心の中でドン引きした。

 この何事にも完璧人間は美冬という少女に出会い、男として無条件に慈しみ愛しているというのに、全く無自覚なのだ。  

(ありえない……というか、美冬ちゃん――)

「不憫すぎる……」

 近くの壁に手をついてうな垂れた高柳を尻目に、鏡哉は定時に帰るべく着々と仕事をこなしていく。

 そんな鏡哉を「この天然たらし男」と恨めしそうに見つめながら、その一方で慈しむ相手を見つけられた鏡哉に、少しの嫉妬心を燃やした高柳なのであった。






(結局、今日の授業は全く頭に入ってこなかった……)

 美冬はとぼとぼと校舎から出て帰宅の途に就く。

 高校二年生、大学受験まで後1年半しかないという大事な時期、ましてや美冬は塾や予備校というものに通っていないので、学校の授業は一分一秒を無駄にしてはならないのに。

(男の人を好きになってる場合じゃないのに――)

 鏡哉は自分の雇用主だ。

 彼のいつもの行動から、ついつい忘れがちにはなるが。

 そして、自分とは違う世界に住む人。

(鏡哉さんのことを、好きになってはいけないのに……) 

 好き。

 そう思ったとたん、顔がぼんと火照る。

(ひゃぁ〜〜! 私が、鏡哉さんを、好き〜〜っ!?)

 ありえない、なんて身の程知らずなんだろう、と美冬は慌てる。

 そう一人百面相をしていると「美冬ちゃん」と誰かに声をかけられた。

 気が付くと高柳が校門の脇に立って、美冬に手招きしている。

「やあ、今日も可愛いね」

「はあ、ありがとうございます。どうされたんですか?」

「ちょっとね。送っていくから乗って?」

 高柳に勧められ社用車であるリムジンに乗せられる。

 いつもなら助手席に乗る高柳が、珍しく後部座席に乗り込んできた。

「あれ? 今日は鏡哉さん一緒じゃないんですね?」

「ああ、社長は仕事が早く終わったから、さっきマンションへ送ったばかりだよ」

「じゃあ今日はどうして?」

 どうして自分を迎えに来たのだろうと、美冬は首をかしげてみせる。

「うん、美冬ちゃんの可愛い顔を見たくなってね」

「もう! 高柳さんまでからかわないでくださいよ〜」

 美冬はそう言って唇を尖らせる。

 しかしそこではたと我に返る。

(ってことはマンションに帰ったら鏡哉さんといきなり二人っきり? む、無理。せめて心の準備をする時間がほしい!)

 いきなりワタワタとしだした美冬に高柳が口を開く。

「どうしたの、美冬ちゃん」

「え? あ、ああ何でもないです……あ、そうだ! 高柳さん今日、夕飯食べて行ってくれませんか?」

 唐突すぎる美冬の申し出に、高柳が少し驚いたように瞳を見開く。

「夕飯? それはとても魅力的なお誘いだけれど、ごめんね。これから会社に戻ってまだ仕事があるんだ」

「そ、そうですか……」

 あきらかにしゅんとした美冬に高柳が突っ込む。



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