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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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勇気ある撤退-3

レジ袋から中身を全部出した州作さんは、改まったように咳払いを一つして、


「えぇ、今日は一日お疲れ様でした。慣れないキャンプの準備をしたりで疲れも出たと思います。

まあ、途中トラブルもあったみたいですが」


と、畏まったように挨拶を始めたけど、明らかにトゲのある言葉に、ギリッと奥歯に力が入った。


「ちょっと疲れも出て、なんとなくみんなの元気がなくなって来てるので、ここはコイツらの力を借りたいと思います。

まあ、無理のない程度で、どうぞ」


ニコニコしながら州作さんは、早くも汗をかき始めた缶達に手のひらを向けて、みんなに勧め始めた。


そう、州作さんがみんなにどうぞと用意したものは、酒だったのだ。




アルコールは飲んだことがない、とは言わない。


俺や修は、ふざけて親の酒をくすねて飲んだりしたことがある。


悪いことがカッコいいという考えが心のどこかにある俺達は、強くもないくせに酒を飲んで、酔っ払って、騒いで、一人前の大人になれたような、そんなバカな真似をしばしばしてきた。


真面目タイプの歩仁内や、女性陣は酒を飲んだことがあるかはわからないけど。


でも、興味ありげに本間さんとヒソヒソ話す石澤さんや、品定めするように缶を手に取る歩仁内の姿を見てると、あからさまな拒否反応はなさそうだ。


「でも……おれ達未成年」


「おーい、こんなとこまでイイコちゃんぶるのか? うちの弟は変に堅物だったんだねぇ」


言いかけた歩仁内の言葉を上から被せるように捲し立てる州作さんは、


「まさか、今まで生きてきて一度も酒を飲んだことがないなんて奴はいないよね?」


と、みんなの顔をゆっくり見回した。


その言葉に、みんなの顔がほんの少しだけバツが悪そうになるのは、心当たりがあるからか。


やっぱり、未成年には許されていないものに興味を示すのは、大人になりかけの年頃の俺達には自然なことだと思う。




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