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籠鳥 〜溺愛〜
【女性向け 官能小説】

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2章-3


「君はこっち――」

 手を引かれて連れて行かれたのは、マンションに併設されているいかにも高級そうなスーパーだった。

「このカードを渡しておくから、これからはここで買い物するといい」

「は、はあ……」

 ようやく手を放した鏡哉は、胸から財布を取り出し部屋番号が書かれたカードを抜き取って美冬に渡した。

「どうした?」

「い、いえ。ほんとホテルみたいだなあと」

「そうか?」

「え、ええ。ところで、今夜何か食べたいものはありますか?」

 背の高い鏡哉を見上げてそう尋ねる。

「そうだなあ……鍋、かな」

「え、そんなのでいいんですか? もっと手の込んだものを用意しますよ?」

「いいんだ。今日寒いし」

 鏡哉はそういうと、カートに籠をセットして歩き出す。

「あ、自分一人で買い物しますよ? 鏡哉さんは先にお部屋で休まれては?」

「いいよ、部屋にいても暇だし」

 鏡哉はそう言ってめぼしい食材をぽいぽいと籠に放っていく。

 大きなハマグリ、有頭エビ、カニなどなど。

(た、高っ!!)

 思わず確認してしまった値札に、美冬は度肝を抜かれる。

 あっけにとられている間に買い物が終了し、鏡哉はレジで部屋まで運ぶように頼んでエレベーターに乗り込んだ。

(う〜ん、世界が違いすぎる)

 ぼ〜っとしていると、鏡哉が美冬を覗き込んでいた。

「明日からはあんまり付き合えないんだが、一人で大丈夫そう?」

 少し心配そうに尋ねてくる鏡哉に、美冬はぶんぶんと首を振ってうなずいた。

 部屋に戻ると既に段ボールが運び込まれていた。

 鏡哉に促されて自分にあてがわれている部屋に荷物を片付ける。

(ほんとに私、ここに住み込むんだな〜)

 整理はすぐさま終わり、制服から私服に着替えてリビングに顔を出すと、ソファーに座った鏡哉がノートパソコンを見つめていた。

「あ、終わった?」

「はい。鏡哉さん、お仕事ですか?」

「いや、メールチェックしてただけ。じゃあ、掃除しようか」

 鏡哉はそう言うとノートパソコンを閉じて立ち上がった。

「え? 一人でできますよ、掃除くらい……と言いますか、私の仕事ですし」

「いいのいいの、二人でやったほうが早いし」

 鏡哉は掃除用具の置き場を教えると、ハンディーモップを持って掃除し始めた。

(優しい人なんだな――)

 美冬はあまりに拒むのもあれで、言われた通り掃除に取り掛かる。

 5LDKの部屋の掃除は1時間以上かかった。

 手早く海鮮鍋の準備を済ませると、ダイニングではなくリビングのローテブルにセットする。

 そして当たり前のように鍋をつつき始めて、美冬ははたと我に返る。

「あ、そういえば私って家政婦ですよね?」

「うん、一応」

「なんで一緒にご飯食べているんでしょうか?」

「いいんじゃない、私が良いと言ってるんだから」

(そ、そういうものかな?)

 美冬は少し引っかかったが、元来あまり深く物事を考え込まないタイプであり、あっさりと鏡哉がいいならいいかと食べた。

 片づけをするのも鏡哉は手伝ってくれ、あっという間に片付いた。

「後は自由にしてくれてていいよ、勉強あるでしょう?」

 時計を見ると20時だった。

 まだ勤務時間まであると美冬は言ったが、鏡哉は「ここで勉強しなさい」と言って聞かなかった。

「私もここで仕事するから、何かわからないところあったら聞きなさい」

「はい、ありがとうございます」

 美冬はお言葉に甘えて出されている宿題に取り掛かる。

 高校に進学し、バイトを始めてからというもの、復習の時間が取れず成績は下降気味だった。

 うんうんと唸りながら宿題をこなしていると、ふと鏡哉の視線を感じた。

 顔を上げると鏡哉と真正面から目が合う。

「コーヒーでも入れましょうか?」

 そう尋ねると、珍しくぼんやりしている様子の鏡哉は首を振った。

「いや、勉強している美冬ちゃん、可愛いなあと思って――」

「え゛っ……?」

 ぼそりとこぼされた鏡哉のそのつぶやきに、美冬は変な声を上げてしまう。

 そして意外なことを口にした鏡哉自身も、はっと我に返ったようで少し苦々しそうな顔をして視線を逸らせた。

「………」

 二人の間に沈黙が落ちる。

(あれだな〜、鏡哉さんて、本当に優しいんだ。家政婦にまでお世辞を言ってくれちゃうなんて)

 美冬はハハハと乾いた笑い声を上げて、再び宿題と格闘した。



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