恋人になる時間-2
紀夫のくちびるは少女の頬を吸った。強く吸う。柔らかい。なんて柔らかいんだ。目を瞑っているレイは「ぁっ……」と小さなあえぎ声を出した。
「こっちを向いて」
「お花、生けなきゃ……」
「あとでいいから……」
紀夫のほうに向かせて、ぎゅっと抱きしめた。
小ぶりな乳房が胸に密着して、悩ましくさせる。
「レイちゃん、大好きだ」
少女のくちびるを奪った。砂糖菓子よりも甘くてジューシーな感触。無我夢中で吸う。強く吸う。レイは目を閉じ、紀夫の背中に手をまわして、キスを受けているだけだった。
紀夫のくちびるは、可憐な少女のくちびるから、いったん離れた。
「レイちゃんも吸ってごらん」
「……」
少女の頬は紅潮していた。
「僕のくちびるを吸って」
二度目のキス。貪るように――。心に届くように――。
やはり、吸い返してこなかった。
三度目のキス。
レイは少しだけ吸ってきた。肩がふるえているように感じた。紀夫は少女のくちびるを貪りつづけた。唾液と唾液が混ざり合う。その甘さに痺れる。
(レイちゃん、くちびるから女になろう)
息苦しくなるほど貪り合った。
「レイちゃん、向こうの部屋にいこう」
紀夫は三原レイの背中とヒップを抱き上げた。
レイの胸に怖れが水模様のように広がっていく。
「怖い……」
「レイちゃん、大丈夫だから」
(どこまで求められるのだろう)
愛撫さえも未経験ゆえ、三原レイの不安は大きい。
レイは抱きかかえられたまま、隣の部屋のベッドの上に運ばれた。
ベッド→三十歳の男と女子高生→セックス。
「いやっ」
男臭い寝室から逃げ出したかった。が、紀夫に手首を掴まれた。
「レイちゃんの嫌がることはしない」
きっぱりと言ってきた。ほんとうだろうか。
ベッドに座った姿勢で引き寄せられて抱きしめられる。抱かれるごとに喜びが湧き上がる。少女は自分の中の女を意識する。
意識して、膝と膝をぴたっと閉じ合わせていたが、紀夫の膝の圧迫により、脚はひらかれた。下半身は密着する。男性のシンボルを強く押しつけられる。
(ペニス……男性性器……。直接じゃなく、ズボン越しなのに、こんなに意識するなんて)
セックスへの怖れが頭を掠めた。