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クリスマスの夜に〜公園で濡らされて〜
【幼馴染 官能小説】

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クリスマスの夜に-2

 連れて来られたのは、賑やかな大通りからそう遠くないところにある公園だった。
 点々とある街灯だけが照らす夜道は薄暗く、他に人影はない。
 入口から奥へ向かって伸びる遊歩道の脇には、綺麗に整備された花壇が並んでいる。
 名前も知らない赤い花が暗闇に揺れている光景は、どことなく幻想的に見えた。
 思わず足を止めたマリを、達也が笑う。
「マリちゃんも、花に見惚れたりすることあるんだね。意外だなあ」
「意外ってどういう意味よ、失礼ね」
「うーん、花なんか蹴散らしそうっていうか」
「だからそれが失礼だって……」
「おっと、足元気をつけて。ほら、こっちだよ」

 ごく自然な様子で肩を抱かれた。
 決して強引ではなく、まるで子猫がじゃれつくように。
 その手を払いのけたりはしない。
 可愛い、と思う。
 だから。
 ……このまま、ずっと可愛いままの達也でいてほしい。
 去年までと同じことを考えている自分に苦笑しながら、マリは促されるまま細い石段を上がった。

 しばらくすると、急に視界が開けて見晴らしの良い場所に出た。
 ぎらぎらした目の痛くなるような電飾も、こうして高い位置から見下ろすと宝石を散りばめたように見えて悪くない。

「ここからの夜景、一度マリちゃんに見せたかったんだ。あ、ごめん、足痛いって言ってたのに……平気?」
「それ言うの遅いから。すっごく痛い、もう歩きたくない」

 お気に入りの華奢なピンヒールで歩き続けた足は、もう感覚がないほど痺れている。
 長時間歩くことになるのは、家を出るときからわかっていた。
 それでもこの靴を履いてきたのは、体のラインを一番綺麗に見せてくれるからだ。
 仮にも華やかな街を歩くのに、いくら楽だからといっても、踵の低い間抜けな靴で出かける気にはなれなかった。
 同じ理由で選んだ高価なストッキング、ブランド物のワンピースやコート。
 いまとなっては意味のない、くだらないこだわり。
 そういうものを捨てきれない自分に腹が立つ。
 達也がマリの足元をまじまじと見つめて微笑む。

「ほんとだ、ちょっと腫れてるかも。女のひとって、よくこんなの履いて歩けるよね」
「……うるさい」
「僕のために、頑張ってオシャレしてきてくれたんでしょ? それくらいわかるよ、うれしいな」
「うるさいってば、あんたなんかのためじゃない。もう、怒るよ」
「ふふ、照れるなって。そこに座ってなよ、飲み物買ってくるから」
 夜景を背にした木製のベンチに座りながら、マリは自動販売機に向かって走っていく達也の後姿をぼんやりと見送った。
 
 達也とこうして一緒にクリスマスを過ごすのは、もう3度目だった。
『わたしのことなんか、もう放っておいて』
『あんたがいたからって、何にもならないのよ』
 何度同じセリフを投げつけたか知れない。
 それでも、達也は相変わらずそばにいる。

 クリスマスだけじゃない。
 互いに仕事が忙しいときでも、2週間とあけずに会いに来る。
 恋人同士でもなんでもない、ただの友人として。
 彼なりの慰めのつもりなのか。
 あの子がいてくれることで、わたしは救われているのか。
 考えれば考えるほど、わからなくなっていく。


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