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エスが続く
【OL/お姉さん 官能小説】

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1. Someone to Watch over Me-13

「ま、若くて見た目可愛らし〜いタイプが好きってことね」
「あ、いえそれだけというわけでは……」
 豪快な三十路女が上司になってスマンと心の中で毒づきながら、ここもこれ以上掘り返したらやがて地雷が出てきそうだったから、平松のリアクションはスルーして話を止めた。彩奈ちゃんを見ていると、平松が子供の頃から今まで、あまりモテずに過ごしてきたんだなと容易に想像できる。モテないことが自信を更に奪っていったのか、自信が無いからモテないのか、どっちが先かはよくわからない。合コンでもキャバクラでも行って女の子と話せばそれなりに対人能力がつくものだ。金払ってまで女の子と喋りに行くのも馬鹿々々しいが、きっと恋愛沙汰と無縁であると対人能力が落ちてしまうのだろう。
「でもまあ、仕事ではもうちょっと自信もったらいいんじゃん。……ていうか」
 話しながら色々考えを巡らせて悦子は頭を下げたが、平松から見たらガクッと頭を落としたように見えただけだった。「ごめんねー、私……、余裕がなかったんだ、きっと。もっとさー、こーいう話きいてあげればよかった」
「あ、いえ……、僕こそ、すみません。人と話すのがヘタで」
 急に項垂れたように見えた悦子に平松が慌てて謝り返した。
「……失敗しても私が何とかするよぅ……。とりあえず、一個でもさ、何かうまくやったら、きっと自信になるって。頑張ろうよ、せっかく私んとこ来たんだから」
 そう言って悦子は猪口を空けた。




 さて、落ち着こう。悦子は自分に言い聞かせたが、いや先にやることがあると思い直した。ここは自分の部屋だ。少し頭が痛む。自分が酒臭い。美穂に愚痴をたれ撒いて飲んで帰った次の日と同じ感覚だから慣れっこだ。女の暮らしとしてどうかとは思うが、ここまでは日常的だ。
 しかし全裸だった。隣でスヤスヤ寝ている、この少しぽっちゃりとした白い肌の物体は何?
 悦子は頭を抱えた。おぼろげな記憶が蘇ってこようとして、今の状況を打破するためにしっかり思い出そうという反面、いや詳しく思い出してはいけないという葛藤が巻き起こる。裸肩をブランケットから出した安穏とした平松の表情。この男に狼藉をはたらかれたのか。しかし、しっかりと自覚される腰回りの充実感だけは否定できない。下半身が妙に爽快。昨日着ていたスーツは、ハンガーに掛けられてクローゼットの縁に掛かっている。こうやってきちんと吊るす強姦者など居るはずがない。
(ヤバい……。ヤバいよね、これ)
 まず服を着よう。裸でいるのはよろしくないと思った悦子は、それを第一優先としてソロリとベッドから出ると、床にあったピンクのショーツを手に取った。油断した下着じゃなくて良かった、と一瞬起こった安堵に違うだろとつっこみながら、両手で拡げて脚を通そうとしたが、ふと見たクロッチの内側は広く乾きシミに色づいていた。それを見た瞬間、頭から煙が出そうなほどの羞恥が湧き起こって、ブラも拾い上げると足音を忍ばせてクローゼットに向かい、新しい下着を出した。平松が呻いて寝返りを打つ。ひっ、と肩を小さくして趨勢を見守ったが、平松は再びゆっくりとした寝息で胸を上下させ始めた。
 極力音を立てないように下着を身に纏う。最近部屋にいるときは、七分袖と丈のスウェットの上下だ。いくらなんでもそんな色気のない恰好で男の前に姿を晒すわけにはいかない。だが何故平松なんかの前で恰好に気を使おうとしてるのだ、と自問自答しながら、開け放ったクローゼットの中の衣装ボックスの前で立ち尽くした。
「……チーフ」
 背後から声が聞こえてきて叫び声を上げそうになった。背を向けたまま身を丸めて両手で体の前を隠し、脚をすり合わせながら顔を横に、目線を背後に遣ると平松が上体を起こしてベッドに座っている。
「ちょっと!! み、見るなっ! ……む、向こうむいて!」
 上ずった声をあげるが、平松の視線を背中に感じる。今までの職場での無表情が嘘であったかのように、一夜をともにした後の男が女を慈しむ表情をしている。「だから、見るなって! はやくっ!」
「はい」
 平松が目線を壁の方に向けたのを見ると、悦子は衣装ボックスの引き出しを開けて中を探った。スキニージーンズを見つけて脚を通す。フロントボタンを嵌める手がもどかしい。トップスを必死に探したが手頃なものが見つからない。
「……いいですか?」
「まだっ! 何、煽ってんのっ!?」
 仕方がない、と悦子はキャミソールを入れている引き出しから一枚取り出すと、頭からかぶった。悦子はドレッサーの前に駆けていった。鏡に身を映す。肩も胸元も丸出しだが、ブラ一丁よりよほどマシだ。だが、自分の顔を見ると、髪がボサボサに乱れていた。まさに抱かれた後の女の姿だ。手櫛で繕いながら、ふと鏡に映り込んだ背後を見ると、許可していないのに平松が自分を眺めているのが見えた。


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