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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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ふがいないや-1

俺と沙織の間に何かがあったのかは明白なのに、誰もそれに触れてこないのは、気味悪いとすら思えた。


微妙になってしまった海水浴は、昼飯を食べたらサッサと切り上げることとなって、そのまま近くの温泉で、早めの入浴と軽い休憩をとることになった。


けど、そこでも俺と沙織は言葉を交わすことはなかった。


そんな俺達を、みんなはどう思っていたのだろう。


州作さんは、あの宣戦布告をしてきたけれど、俺にも変わらない態度で相変わらず接してくるから、みんなはもしかしたら気付いていないかもしれないとも考えたけど。


歩仁内にたしなめられたはずの州作さんが、前にも増して沙織にアタックする姿を。


赤い目で俯きっぱなしの沙織を。


そして、そんな二人から目を逸らす俺を見て、何もないと気付かないわけがあるだろうか?


でも、自分から修達に“沙織と別れた”と言えなかったのは、それを事実と受け入れたくなかった。


結果、俺はこうして州作さんが沙織の横を陣取っている姿を、歯噛みしながら眺めることしか出来なかったのだ。



   ◇   ◇   ◇



コテージに戻ってきた時には4時を過ぎていて、相変わらず青く晴れ渡っていた空だけど、ほんのり黄みがかる入道雲がもうじきやってくる夕暮れを教えてくれた。


「んじゃ、バーベキューの準備に取りかかろうと思うので、各自適当に分担してください」


相変わらずテキパキ仕切る歩仁内の指示で、まるで役割分担が決まっているかのようにみんなが散らばる。


とは言っても、バーベキューの準備なんて、案外すぐ終わる。


バーベキューコンロの火を起こすのがちょっぴり大変だけど、紙皿や紙コップを用意したりすれば、あとは肉を焼きながらのんびりおしゃべりすればいいし。


焼きそばを作るにしても(昼間も食ったけど)、カット野菜を持ってきたから、サッと洗うだけでいいし、あとは玉ねぎやとうもろこし、カボチャなんかのバーベキュー用の野菜をザクザク切るだけでいいのだ。


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