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レイジーマン
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レイジーマン-6

結局先生は、あたしの制止の声を無視してビールを飲み干してしまった。

いいやもう。

あたしは市内電車かバスで帰ることに決めた。こんな酔っ払いに送ってもらうのは自殺行為に等しい。もちろん、先生にとっても危ない。

酒が入ったせいか、先生は陽気になり始めた。
「なぁ、匂坂」
楽しそうな声色だ。
「なんですか」
先生はあたしの隣にどっかりと腰を下ろした。二人がけ用のソファなので体が密着してしまい、あたしは少したじろいだ。
にたにた笑いながら先生がこちらを向く。
「お前、剣道ばっかやってねーで男の一人作れよ。剣道に青春の全てを注ぎ込むのか?それはちょっとイタイぞ」
言うなり先生がデコピンしてきた。
コンッ

「いたっ!」
「そう、イタイんだ」
満足そうに頷く。
「…、先生だって彼女いないんだから同じようなもんでしょ」
おでこを押さえながら恨みがましく言う。
「あー?いんだよおれは。なんたって生徒みんながおれの恋人だからね。男も女も、みんな愛しいおれの恋人なんだぞ」

芝居がかった声を上げ、また笑い始めた。

「…」

何が『缶一本なんて余裕』だよ。思いっきり酔っ払ってるじゃない。
酒弱いなら飲むなっての。

先生はおもむろに立ち上がるとキッチンの方へ消えた。
戻って来た彼の手には新しいビールの缶があった。
あたしの視線に気付いた先生は屈託なく笑って缶を示す。
「お前も飲む?」
「はぁ?飲むわけないでしょ!未成年なんだから。生徒を非行に誘わないで下さいよ、このばか教師」
「あっそう。じゃあやらない。あとでくれとか言うなよ」
「言いません!」

プシュッ。

軽快な音で2本目を開けると、ぐいっとあおった。
ぷはぁ、と息をつき、口についた泡を舌でぺろりと舐めた。
その仕種はなぜか淫靡に映って、思わず目が釘づけになった。

「……あたし…」
弱々しい声が出た。

「ん?」

先生がこちらを見る。
あたしは、すぅっと息を吸った。
「あたしだって剣道が全てなわけじゃないんです。…恋もしてます」
先生が一瞬目を見張った。
「へェ〜…恋?匂坂がねぇ。そりゃあ驚いた。でもいいことだと思うぜ」

美味しそうにビールを飲み、あたしをニヤニヤと見つめる。

「相手、剣道部のヤツだろ」

一瞬迷ってから、頷くあたし。

「お、当たり?誰だよ〜。あ、分かった。荻原だろ?」
「…違います」


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