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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵
【フェチ/マニア 官能小説】

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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 3.-8

「そんなわけないでしょ?」
 友梨乃は影に向かって意識して恬淡とした声を発した。「……もう、二度としないから」
「そやね。彼氏おるもんなぁ? 浮気したらあかんわ」
 憎らしい声を発して自分の部屋へと向かう途中、リビングのドアを開けると廊下の灯りが漏れ入ってきて智恵の横顔を照らした。一瞬垣間見れたその表情は、友梨乃への嘲りと、そして幾許かの憐憫が含まれていた。
 友梨乃は部屋に入ると息を付いた。陽太郎と付き合うようになって、本当に智恵は一切手を出してこない。そして智恵との関係がギクシャクしている。当然だった。
(一緒に住むのやめたほうがいいのかなぁ……)
 智恵のお陰で今の仕事に就き、ここに暮らしているとはいっても、この空気のまま住み続けるのは智恵も嫌だろうと思った。離れて暮らしたいと言っても、智恵は嫌味は言うだろうが、恩に着せて頑と引き止めるようなことはしないだろう。
 友梨乃は短パンを脱ぎ置くと部屋の電気を消して布団に入った。明日、陽太郎に会えると思うと胸が甘く疼いた。智恵のことは本気で好きだった。だがもう過去形だ。陽太郎は自分の資質を受け入れて、嗜好に合わせた美しい姿となってなお自分を求めてくれる。こんなにも必要とされたことは初めてだった。たまらなく嬉しい。陽太郎の思いに早く応えてやりたいと思う。
 ここ数日、友梨乃は床に入るとすぐに体が疼いた。
(陽太郎くん……。大好き)
 枕に唇を押し当てて頭の中でつぶやいた。もう陽太郎のことが好きになっている、と思った。努めて思った。心の中に残る違和感は、きっと思い違いだ。
 友梨乃はパイル地のベビードールの上から敏感になった乳首を爪先で軽く引っ掻くように撫でた。
「んっ……」
 声が漏れる。目を閉じたまま接触を求めているバストの頂点を弾き、輪郭に沿うように回しなぞると、背中を一気に性感がかけぬけて脚をぴったりと閉じ合わせなければ腰が淫らに前後してしまいそうだった。この一年以上、智恵は友梨乃を数日置かず抱いてきた。セックスの和みと快さを教えられて以来、こんなにも長い間抱かれなかったことはなかった。
(陽太郎くん)
 もう一度頭の中で恋人の名を呼んで、疼きが充満し始めたバストを手のひらに包んで押し上げるように解すと更に鮮烈な焦燥が上躯を覆っていって、内ももを強く擦りあわせていても体の奥から潤いが湧出したのが分かった。違う、自分は陽太郎に抱かれたいんだ。健気に自分を待ってくれている彼氏に応えたいんだ。言い聞かせながら自分の体をなぞり降りていって裾を捲り、手首を挟むように脚の間の中心に指を滑りこませると、ショーツの中心は外から触っても分かるほどに濡れていた。人差し指の先で淫りがわしくなった雛突に触れて、生地を擦るように動かすと声が漏れそうになって必死に飲み込んだが、腰は何度も細かく痙攣した。手のひらで唇を強く抑えて、もう一方の手の指をクリトリスから更に奥に差し入れて柔らかみに食い込むほど押し付けて左右に動かすと、布団の中から淫らな湿音が聞こえてくる。
 毎夜こうして悶々としていた。付き合い始めてすぐは、想い慕われる幸せに心地よくたゆといながら眠りに落ちていた。しかしふとした気の緩みで、疼きが起こった場所を指でなぞってしまった日から、愉楽を求める焦燥が押し止められなくなり、なかなか眠れなかった。目を逸したくなるような淫らな欲望はずっと友梨乃の体に澱みとなって溜まっていった。
 これは仕方ないことなんだ。私は変わろうとしている。その途中だから。
 友梨乃は布団から抜け出て身を起こすと、ベビードールを捲って座ったままショーツを脱いだ。暗くて見えなくても、指に触れただけで、ショーツは後ろのほうまで汚れてしまっているのが容易に想像できた。立ち上がるとクローゼットへ向かう。そしてディルドを取り出すと、誰も見ていないのに隠すように胸に押し抱いて、急いで布団の中に戻った。瞼をぎゅっと閉じて、これは違う仕方がない、寝不足で仕事にも影響しかねないから、と反芻した。両手で握ったディルドが鼻筋と頬に触れていた。友梨乃はとてつもない背徳感を感じながら、横臥したままディルドの先端から口の中に含んでいった。唾液が溢れてくる。前後させると窄めた唇を亀頭の傘が弾くように擦ってくる。明らかに作り物の造形だと分かっていても、樹脂に彫り込まれた凹凸が舌や頬を擦ってくると、期待感に体の奥がビクッと蠢いて、蜜が脚の付け根に溢れ擦り合わせる肌を滑らせた。
「陽太郎くん……」
 枕に顔を押し当てて声に出し、友梨乃はうつ伏せになって膝を立てた。布団の中でヒップを高く上げて開いた脚の間に、口から出したディルドを向かわせる。いつも智恵の体の中に埋められた部分を握って、先端を入り口に押し当てた。蜜の溢れた入口と唾で滑らかにされた先端は滞留なく擦れ合う。
 自分でしたことがない。指でするのは怖いんだ。だから、仕方ない。いつかこうやって陽太郎に抱かれるんだ。それまでのことだから。
 


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