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〈亡者達の誘う地〜刑事・銭森四姉妹〉
【鬼畜 官能小説】

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〈亡者達の誘う地〜最終章〉-4

『や、八代ぉッ!何で俺まで殺さなきゃいけねえんだよぉ?お前と俺で、これまで通り……うわあぁ!!』


ドアノブがガチャガチャと回り、ドアを開けようと引っ張られる……火事場の馬鹿力は見事に発揮され、どうにか踏み止まれた……。


『お、お前のおかげでよ、今回は香木が大量に貰えたんだ……へへ……何千万も手に入るぜ?なあ、7・3で山分けしよう…いや、8・2で…違う、9・1でもいい!悪い話じゃねえだろう?』

『……………』


専務の背後には、香木を入れた大きな木箱が並んでいる。
追い詰められた専務は、香木で獲られる金で、八代と取り引きをしようとした。
自分が殺された後、八代が香木を好きに出来るという事すら、頭には無いようだ。


『俺はこれからもジャンジャン稼ぐぜ?も、もちろん稼ぎの9割はお前にやる……な?俺を生かしておいた方が得だろう…?』

『…………』


ドアの向こうは沈黙したまま……不気味な静けさが続いている……自分の甘言に八代の心が揺らぎ始めたと都合良く解釈した専務が、更に懐柔しようとした刹那、船全体が揺らぐような振動と、鈍い音が響き渡った……。


『な……何だ……?』


その振動が収まったかと思うや、今度はゴンッという何かを叩いたような音まで聴こえてきた……と、その音と振動に専務は軽い目眩に襲われ、平衡感覚が狂っていった……。


『……ぐはぁッ!!』


それは目眩などでは無かった。
この船そのものが傾いたのだと気が付いた時、背後の木箱はズルズルと滑り、ドアとの間に専務の身体を挟んだ。


『な…何なんだよぉッ…八代ぉッ!!俺の…俺の船に何しやがったぁ!!』


傾斜はどんどんと進み、木箱の重さが増していく……あまりの苦しさと痛みに、ドアノブを捻ってドアを開けようとしたが、腹部に食い込むように密着した掌は、もう動かせる状態では無かった……。


『あの…あの音は…!?』


ボゴンボゴンとドラム缶を押し潰すような音で、専務は貨物船が沈んでいっているのを知った……。

船には、荷物の積載量に合わせて浮力を調整する為の、注排水装置がある。
八代は注排水タンクの隔壁にプラスチック爆弾で穴を開け、注水するキングストン弁を開放させ続けたのだ。
隔壁の穴から漏れだした大量の海水は貨物船から浮力を奪い、ただの鋼鉄の塊とさせて深海の底へと誘う……。


『た…助けてくれえ!!誰かッ…誰か助けてくれえぇぇッ!!!』


曾て、この部屋で女性達は「助けて」と叫んだ。
等しく、例外なく、その願いは聞き入れられず、その身体は汚辱と破滅に引き裂かれていった。

悲鳴は誰にも届かない。

ドアの隙間から海水が噴き出し、鉄壁の向こうは人間の生存能力の及ばない世界に埋め尽くされた。


「……フフ…フフフ……」

『!?』


ドアが床になり、壁が天井となった部屋の中から、女性の笑い声が聞こえてきた……今際の幻聴かと辺りを見回した専務の瞳に、ぼんやりと浮遊する人影が映る……それは次第に数を増やし、影の輪郭は鮮明なものへと変わっていった……。



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