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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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暗闇に現れた者-3

「絆が、生きてた?」

いつの間にか東堂クンと番号を交換した菫、その彼から聞いた話を聞く。

もうやめて…、もはや吉報でも何でもない、誰が何と言おうと酷いジョークにしか聞こえない。

「杏…。」

彼は死んだんでしょ!?手術に失敗して、次に都合よく適合者何て見つかりっこなく。医者からもハッキリと聞いた、終いには葬儀社から出ていく彼の両親を見かけて。

信じたくない認めたくない…、それでもようやく時間を掛けて苦しい想いをして、受け入れる事が出来たって言うのに。

「その、良かったね…。」
「何がよ…。」
「え…。」

頭に血が昇った私は思わず枕を菫の顔にぶつけ。

「いい加減にしてよっ!!私が今どんな気持ちか判ってんの?」
「杏…。」

皆して人を馬鹿にしてっ……

「杏、信じられない気持ちは良く解る、でもね!本当なの!東堂クンが今更そんな冗談を言う訳…。」
「うっさいなぁっ!そんなの判ってるよ!でもそういう問題じゃない。」
「……。」
「やっと、受け入れられたっていうのに、どうしてそっとさせてくれないの!?皆して人をからかって楽しい。」

話を遮り隼のように頬を引っ叩く菫。

「甘ったれてんじゃないよっ!何自分だけが不幸みたいに言ってるの!」
「菫…。」
「私も、東堂クンも、アンタを救いたい、その一心で…、解る?オバサンは重たい心労を抱えつつ普段通り明るく振舞い家事をこなしオジサンを支え、そのオジサンも何か話じゃ
会社で娘サンが引き籠りで自殺したとか陰口を叩かれ。それでもアンタを少しでも元気づけようと美味しい差し入れを作ってあげたり、少しでも笑って欲しいと釣り帰りからの土産話をしたり。」

毎日見舞いにきて楽しそうに色んな料理を作ってきたり、さも自分が聞いてほしいかのように釣り場での話を愉快に語る母と父、あの自殺未遂以来、暗い顔をして責めたりするような事はただ一度としてなく。

東堂クンも私と絆とは微妙な関係にあり、憎い相手であっても不思議ではないのに、恋敵
である絆が居る小樽まで遥々足を運び、私と彼の為に。

そして今目の前に居る菫も、こんな何時までもうじうじした友人を持って、毎日どんな思いで居るのか、それでもこうして毎日見舞いに来てくれて。

熱気が冷め、自分が急に恥ずかしくなり。

「ごめん…。」
「いいよっ!私、アンタの性格をよーく知ってるし。私たちはアンタの幸せを願ってるよ…!だから。」
「菫…、でも御免なさい。」

友人の優しさに胸が熱くなり、今度の謝罪は枕を投げた事ではなく。

「それでも、彼が生きてる…何て、とても。」
「……いいよ、無理しなくても。誰だってこんな状況じゃー受け入れられないよ。」
「菫…。」
「私は杏がしたいようにすればいいよ。ただ!授かった命を自ら投げ捨てるような真似は絶対にやめて!そんな事したらオバサン達、悲しむよ…いやきっと自分達を責めるよ、一生…。私だって、恐らく悲しみは消えたりしない。」
「……。」

ありがとう、菫。

窓からオレンジの夕陽が差し込む。





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