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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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I'M A LOSER-3

「その止め方がいつも荒っぽくてさ……両方ボコボコにしてしまうんだ。

当の本人は、“喧嘩両成敗だからいいよな”なんてカラカラ笑うだけでさ。

その爽やかな笑顔がすげー怖かったんだ。

返り討ちしようとしても誰もかなわねえし、喧嘩したり悪さしてるとボコボコにされるしで、結局あの人を怒らすのは止めようって結論が不良共の間に広まって、結果、荒れてた学校も平和になった、つーわけだ」


「嘘だあ……」


あの人のどこから見ても草食系の雰囲気に、マッチョの言葉はとても信じられなかったけど、こんな怖そうな奴らがペコペコしてた様子が、目に焼き付いて離れない。


そういや、細身の州作さんだけど、俺みたいにガリガリもやしっこっていう細身ではなく、筋肉はしっかりついている、いい身体をしていたな、なんて、彼の後ろ姿を思い出した。


「とにかく、歩仁内さんは怒らせたら怖い人だから、ちゃんと謝らせてくれ。彼女にも」


何度目になるかわからない謝罪に、すっかり俺も沙織も戸惑っていた。


でも、奴らは深々と頭を下げてばかりで、結局俺達はそれを受け入れることしかできなかった。


こんな真摯な謝罪を受けると、不思議なもので、さっきの怒りもスーッとひいていく。


そして、実はコイツらいい奴なんじゃないかという錯覚まで起こしてしまう、恐るべしギャップマジック。


そんなギャップマジックを州作さんにも同様に感じていた。

  

   ◇   ◇   ◇




三人衆はこちらが申し訳なく思うくらい、何度も頭を下げて、ようやく去っていった。


そんな奴らの後ろ姿を見送りながら、これにて一件落着だって、端から見ればそう思うだろう。


だけど……。


「倫平……」


沙織が名前を呼んで、現実に帰ってきたような気がした俺。


だけど、真っ正面から沙織と向き合うことがなぜかできず、目があっちこっち泳いでいた。


「大丈夫だった……?」


「あ、うん……」


「まさか歩仁内くんのお兄さんとあの人達が知り合いなんて、地元とは言え、世間は狭いね」


俺の目の前に駆け寄ってきた沙織は、安堵からか急に饒舌になったようだ。


いつもの沙織らしく、明るく溌剌とした笑顔がようやく戻る。


その笑顔は大好きなはずなのに、なぜか胸がチリ、と疼いた。




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