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三分お待ち下さい
【コメディ 官能小説】

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三分後の世界-3


私はコンビニから小走りで出ると自転車に乗った。
急いでコンビニから離れる。
二人の店員は品出しとレジをしていて気づいてない。
私のカバンの中には、万引きしてきたリップクリームが入っている。
コンビニから五分ほど離れた公園の入口に自転車を停めて、公園のベンチに腰を下ろした。
(今度はどこにしようかな)
私はリップクリームが欲しかったわけではない。
こっそり盗み出すことのスリルを味わうのが、ストレス解消の方法になっていた。
私の家はわりあい裕福なほうで、家に呼んだ同級生がめずらしげに見渡すほど広い。
その分だけ、いろいろなことに気を使う必要がある。言葉づかい、髪型、服装、笑顔の作りかたまで。
家政婦さんもいて、お嬢様と呼ばれている。
同級生たちは塾に通っていたが私はちがう。家庭教師が家に来る。学校で授業を受けて、また家で授業をつきっきりで受けているような感じだ。
小学生の頃から高校生になっても変わらない。さらに最近、生け花まで習っている。
私のプライベートはトイレとお風呂と眠っている間、そして通学の行き帰りぐらい。
「あのチャリンコ、お前のか?」
「そうですけど、何か?」
いきなり話かけてきたのは、ジーパンにアニメキャラがプリントされたTシャツにスニーカの人だった。
(そういえば、たまにコンビニで見かける人だ)
「あれもかっぱらってきたのか?」
私はドキッとした。
(もしかして、見られてたのかな……)
「万引きして、楽しいか?」
その人は私の隣に腰を下ろして、煙草に火をつけるとそう言った。
「なんのことですか。あの、ここは喫煙場所じゃないですけど」
ふうっ、とその人は私の顔に煙草の煙を吹きかけた。私は眉をしかめて、目を閉じた。
「ナマイキな泥棒猫のくせに」
「証拠でもあるんですか?」
「この煙草を喫い終わったらだいたい三分。そのあとでたっぷり自供してもらう」
私はこの目撃者から逃げることにした。
この公園は夕方になると人があまり通らない。
話を誰かに聞かれている心配はない。
「待てよ」
立ち上がったところをバックをつかまれた。
「離して下さい。大声出しますよ」
「まあ、聞けよ。俺があのコンビニでお前を初めて見かけたのは三ヶ月前だ。万引きしたのを見たのはさっきが初めてだが、慣れてる感じがした。あと二つ自供させたいことがある」
「何もあなたと話すことなんて……」
その人は煙草の吸殻を踏み消した。
「オナニーについてと、処女かどうか教えろ」
その人がバックを急に離したので足元がふらついた。それ以上にセクハラまがいの質問に腹が立った。
私がにらみつけていると、その人は立ち上がって、私の真っ正面に近づいた。
「むぐっ、うぅ……」
私の初めてのキスはこの人に奪われた。
「答えろ。キスをしたことぐらいあるんだろ?」
「……ありません」
私はまたベンチに座り込んでしまった。ショックで呆然としたあとに涙が溢れてきた。
「あー、泣いたら許されるのは赤ちゃんのうちだけだぞ、泥棒猫」
その人は頭をかきながら言った。
「明日、また同じぐらいの時間にお前はこの場所にくるんだ。ただし、雨だったら来ない。いいな?」
その人はそう言うとまだ泣いている私の頭を撫でた。そして私は、公園のベンチに一人残された。
私は家に帰って、普段と変わらない態度やふるまいを心がけて崩さないようにした。
入浴中、お湯につかっているとき、鏡をみて自分の唇にふれてみた。キスの感触やぬくもりが残っている気がして、胸が自分ではどうにもできないほど、どきどきしてしまう。
「昨日の夜、お風呂場で……オナニーしました」
その人に、私は恥ずかしくて小声になりながら告白した。ちらっとその人の顔を見てみた。しかし、すっかり日が暮れておたがいの表情がわからないぐらい暗くなっていた。
「ここでしてみろ。誰か来たら教えてやる。でも、大きな声を出すなよ」
「はい」
私は万引きをネタに脅されていると思い込んだふりをしながら、その人の要求に応じた。
下着を汚したくないので下ろして、少し脚を開いて片手をスカートの中にゆっくり入れた。
その人はオナニーしている私の隣で喫煙していた。
私はお風呂場でするように目を閉じて、もう濡れているわれめとクリトリスを指先でほぐすように弄った。
(声が出ちゃいそう……喘ぎ声、聞かれちゃう)
「ぁ、んんっ……ぁ、ぁあっ……」
すると、その人は煙草を消して、私の頬にふれてキスをしました。
私たちのいるベンチの前を、自転車が走る音が通りすぎていった。キスされた時、私はイッてしまった。
キスと絶頂の余韻が終わってから、私はその人が自転車に乗っていた人から、私の姿を見せないように隠してくれたことに気がついた。
「今日はもう下着をはかないで帰れ。三日後に、また来たら返してやる」
その人は私のパンティを取り上げてしまった。
私は下着をはかないまま、制服姿で自転車に乗って帰宅した。あたりが暗かったけれど、パンティをはいていないだけなのに感じがまったくちがった。
はっきりと恥部を意識してしまう。
名前も知らない男の人の喫煙していた煙草の匂いが、体に染みついてしまった気がした。
三日後、私は前より少し早い時間に公園のベンチで、その人を待っていた。
「泥棒猫、来てたのか」
私は三日間、頭から離れなかったその人の声に、心が歓喜と興奮にふるえた。
「返して下さい」
下着と一緒に、冷静でいられる心も。
万引きのスリルなんて、この人といる時間にくらべたら生ぬるく感じる。
すっ、と私の耳をその人がふれた。耳たぶをつまんだり、指先で外側を撫でた。
「んっ、ひゃんっ、あぁぁっ」
「かなり敏感だな」
その人は顔を近づけて囁くと、ふうっと息を耳に吹きかけた。くすぐったさとぞくっとする快感。私は膣奥が疼いて火照るのを感じた。

[完]


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