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鍵盤に乗せたラブレター
【同性愛♂ 官能小説】

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ときめき−二人の出会い-3

 ボールペンにキャップをかぶせた後、大五郎はケネスに顔を向け直した。「ケンちゃんはがんばってっか?」
「ああ、菓子作りの専門学校も面白うなってきたらしわ。今日は休みやから昨夜から彼女んちに泊まりやけどな」
「そうか、若いモンはいいね」
「今頃、いちゃいちゃ乳繰り合っとるんとちゃうか?」
「こんな朝っぱらからか?」
「あいつ、ああ見えて結構肉食やから」
 大五郎はにやりとして言った。「親に似たんじゃねえのか?」
「やかましわ」

 ケネスの息子健太郎は、今年高校を卒業して、家業を継ぐべくお菓子作りの専門学校に通い始めていた。

 酒屋の店主は笑いながらレジのすぐ横にある大きな冷蔵ショーケースの中から缶コーヒーを取り出してケネスに手渡した。「ほらよ。今日も暑くなりそうだ」
 「おおきに」ケネスはすぐにプルタブを起こして、中身を一口飲んだ後、眉尻を下げて言った。
「ほんま、デキ婚なんぞにならんとええんやけどな」
「大丈夫だろ、ケンちゃんなら。うちの勇輔と違って分別あっから」
「ま、とりあえずまじめに勉強しとるようやから、安心はしとるけどな」
「ええ跡継ぎになりそうだな」

「勇輔はどやねん。先のこと」
「やつは水泳オタクだからな。去年ケンちゃんにかわいがってもらっていい気になってるんじゃねえか」
 主は肩をすくめた。
「健太郎のお気に入りの後輩やったからな、勇輔」
「今もケンジんとこに通ってんのか? ケンちゃん」
「金曜日の夕方な。時々泳いどかんと身体がなまる、言うて」

 市内で最も規模の大きい水泳教室『海棠スイミングスクール』を夫婦で経営しているのは海棠ケンジという自らも高校時代にバタフライ競技で名を馳せた名スイマーだ。彼はケネスの高校時代からの親友で、その双子の妹マユミがケネスの妻なのだった。

 大五郎はにやにやしながら言った。「愛人ケンジとはときどき乳繰り合ってんのか? おまえ」
「先週の土曜日も飲んだで、ケンジと。その勢いで抱き合うたった」
 大五郎は笑いながら言った。「なにさらっと言ってやがる。普通じゃねえだろ、そんな関係。男同士でよ」
「何言うとる。好き嫌いにオトコ女、関係ないわい。ま、ケンジとのセックスはレクレーションの一種やけどな」
「爽やかな顔しやがって、まったく……」
「おまえも一回ぐらいどや? わいと、今度の土曜日あたり」
 その酒屋の店主は即答した。「遠慮しとく」
 ケネスは笑って缶コーヒーに口をつけた。

 大五郎も手にした缶コーヒーを飲み干した。「注文、急ぎか?」
「いや、いつでもええで。ついでの時にでも」
「夕方でもいいなら、勇輔のやつが帰ってきて持って行かせっから」
「ああ、それでかめへん」
「準備しとくよ」
「よろしゅう頼んだで」


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