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〈亡者達の誘う地〜刑事・銭森四姉妹〉
【鬼畜 官能小説】

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〈狂宴・後編〉-7

「離せぇッ!!私に…私にそんな物ッ!!やめ…ッやめろおぉぉ!!!」


左右に振り乱れて喚き散らす頭部に、タムルはマスクを強引に被せ、後頭部のファスナーを締めた。
もう景子だと視認出来る部分は、マスクからはみ出て垂れる長い髪と、喧しく喚き散らす薄い桃色の唇、そして尖った顎だけしか無かった。


「ち、ちくしょうッ!!こ、こんな…こんなマスクなんかぁッ!!」


マスクを完璧に被らされたと知って、部下達は景子から離れた。
当然、この暗闇から脱しようと景子はファスナーを開けようとするが、革袋で包まれた掌では何も掴めず、ただただ後頭部を掻き毟っているだけに終わっていた。


『フヒッ!……何してるの?ねえ、貴女は何をしてるのよぉ?アハハハ!』


掴めない掌でマスクを掻き毟る様は、とてつもない苦悩に悶え、頭を抱えて絶望しているかのよう。
事実、そういう状況には違いないのだが、怒声と悲鳴が混じった叫びをあげながらのソレは、あまりに惨めで笑いを誘う。


「んがあぁッ!!く…くそぉッ!!」


必死の様を笑われるのにも我慢ならず、景子は這った姿勢のままで拳を振り回した。
何処にタムルが居るのかも分からぬまま、ただ拳で空を斬る。
それは誰の目にも悪足掻きにしか見えず、それは春奈も例外では無かった……。



『ふぅ〜…全く呆れるわねぇ?目が見えなくて、しかも四つん這いのままで私を倒そうとするなんて……』


打撃は、腕の力のみではなく、背筋や脚力、体重移動が重なって、威力を発揮するもの。
四つん這いのままでの打撃では、腕力のみしか働いてはいない。
それは猫パンチと何ら変わらず、威力など皆無に等しい。
そんな打撃でタムルが倒せる訳は無いし、しかも当てられるのは膝か、良くて太股くらいだろう。

そんな景子を鼻で笑い、腕組みをしたまま見下ろしているタムルは、気怠そうに先程の続きを口にした。


『……その拳……もし私に一発でも当てたら、お返しに優愛にも一発ブチ込ませるわ……』

「ッ!!!」


景子から、その表情は見えてはいないが、今のタムルの声からは、もう優愛には何の未練も無く、何時でも廃棄しても構わないという冷酷さが滲んでいた。
それを増長させるように、景子の周囲には、再び鉄パイプで床を擦る音が聞こえてきた。



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