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新【翼の記憶】
【ファンタジー 恋愛小説】

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異空間の旅・吸血鬼の国-2

「ハァ、ハァ・・・クソッ!!」

恨めしそうな息切れのする声を聞き、ゆっくりと目をあけたアレスが見たのは・・・美しかった外見はひどく焼けただれ、艶やかな髪も熱にやられたように見るも無残に溶けてしまっている醜い女の姿だった。

すると、激怒するかと思われたもうひとりの男のヴァンパイアは嘲笑うかのように冷たい視線を彼女に向ける。

「悠久の使者に手を出せばどうなるか・・・わかりきってたことだろう?自業自得だな」

「う、うるさいっ!!」

ギロリと睨む女の瞳にも動じず、男は弧を描くように片手を胸元に添えると、紳士のような振る舞いで優雅に頭をさげた。

「お戯れが過ぎました・・・大変申し訳ありません悠久の使者殿。我が王へのご用件ならば私めが仰せつかります」

「は、はい・・・」

まだドキドキと高鳴る胸を落ち着けるためにアレスは深呼吸した。そして背後からブラストがキュリオの書簡を彼に差し出す。今度はブラストが腕を掴まれるのではないかとそのやりとりに警戒したアレスだったが、男はすんなり手紙を受け取ると一礼して「確かにお受け取りいたしました」と大人しく下がっていった。

そして男がいなくなると、取り残された女は重く体を引きずるようにして視界から消えていく。そんな背景に見えるのは、空に浮かぶ巨大な月と漆黒の闇。

「急がないと・・・」

そして門が閉ざされるとアレスはカイを振り返って言った。

「カイ、助けてくれてありがとう。君が私の腕を掴んでくれたおかげで倒れ込まずにすんだよ」

ニコリと笑みを向けるアレスに恥ずかしくなったカイは照れ隠しのように笑うと、今度はいきなり激怒してブラストへと詰め寄った。

「おっさん何でアレスを助けなかったんだよ!!」

それはテトラたちにも言えることで、引き込まれたアレスを助けようとした者はカイ以外に誰もいなかったのだ。

すると、ニカッと笑ったブラストがバンバンとカイの背中を叩いた。

「はっはっは!少し加護の灯がどんなものか見せてやるのもいいかと思ってなっ!!出発前に言われなかったか?加護の灯があれば絶対安全だって!」

得意げに笑うブラストはグリグリとカイとアレスの頭を撫でくりまわしている。

「加護の灯がなければ見習いの君たちを使者に選ぶなんてキュリオ様がなさるわけないさ」

同じく微笑むテトラたち。

その頃、悠久の王の書簡を受け取ったヴァンパイアの男は蝙蝠(コウモリ)のようなに皮膚が進化した黒い翼を広げ一点を目指していた。

やがて見えてきた巨大な古城がそびえ立つ丘にたどり着くと急降下し、城門の前へと降り立った。

いたるところに明かりが灯され、城周辺を行き交うヴァンパイアの数も多い。しかし、万年夜のこの国ではそれらの音を吸収するように無音に近い静寂が常に漂っている。彼らはこの静けさを心地よく感じているが・・・たったひとりだけそうではない男がいた。

門番の彼は迷うことなく古城の廊下を突き進み、大きなホールへと通じる扉の前に立った。ノックをしようと片手をあげるが、しばし考えた後・・・そのままノブを回し部屋の中へと足を踏み入れた。

そして真正面にある檀上へと視線をうつし、真紅の玉座に人の影を探す。が、彼が思ったとおりそこに人の姿はなく・・・かわりに広間の隅から姿を現したのは、王の相談役でもある大臣の"長老"と言われるヴァンパイアだった。

「・・・相棒はどうした?交代で飯でも食いにきたわけではなさそうじゃな?」

彼が手にした書簡を目にし、長老は穏やかな微笑みを向けてくる。

「大臣、王はいずこにおられるか?」

「・・・気まぐれなお方じゃからなぁ・・・じゃが、外に出た様子はなかったからの。城の中にはいるだろうて・・・」

「了解した。探してみる」

門番の彼は預かった書簡を胸元にしまうと、王が行きそうないくつかの場所をあたることにした。

(ここにはいないか・・・)

時折、水の流れるオブジェの前で「暇だ」とぼやいている彼の姿を見かけたことがあったが、今日はここにはいないらしい。

それからいくつか部屋を覗いてみるが、彼の姿はどこにもなかった。

あまり表情を持たない門番だったが、しびれを切らし・・・イライラばかりがつのっていく。(大臣にはせめて行先を伝えておいてくださいと、あれほど申し上げたのに・・・っ!)

「王っ!!どちらにおいでですかっっ!!悠久の使者から書簡が届いておりますよ!!!」

やけくそになった彼はどこにいるかもわからない主へと大声で叫んだ。

すると・・・

「うるせーぞ。さっきから何してやがる」

はっと頭上を見上げると、そこには漆黒の髪に紅の瞳を持つ・・・ヴァンパイアの王の姿があった――――



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