逢いたい！-3
「へぇー、上手だねぇー。」
しょうもない話が飛び交ういつもの教室。クラスの一人が、自分が描いた水彩画を友達に
見せる。
以前加藤君らから美術部に部員が増えたという吉報を聞き、絵を見せる彼女も新入部員の一人。
本来なら彼女を歓迎したいくらいの喜びに飢える筈なのダガ、絵を目にして不意に彼の温もりを思い出してしまい。
「絆……。」
そんな干からびた魚のように元気のない私に、視線を置く菫。
会いたい、会ってもう一度あんな風に彼の絵を眺めたい。
……ダメだ、そんな事は。
揺れる思いは教室だけに留まらず、私は何の気に無しに美術部室の近くにある階段を降りようとした、すると。
「へぇー、良い人なんですね。」
「まぁーね。」
扉の向こうから高い声と、加藤君と思しき声を耳にし、それと同時に足を止め。
どうやら部室に絵描き初心者でも解りやすい本を幾つか設置してある事に、新入部員の子が感激を受けて。その本を置いておこうと考えたのは紛れもなく部長である絆。
加藤君曰く絆は後輩にとても面倒見が良い。落ち込んでいれば勇気づけ、悩み事があれば
親身に耳を傾け、訳あって退部する部員に対しても、気を使わせないように最後まで笑顔で送ってあげて、ただでさえ部員が少なく怒って引き留めても良いのに。
彼はやっぱり優しい…、私もそんな彼に何度元気づけられたか。
「………。」
あぁ、また。
今度は瞳が赤く染まってきたかも。
背中から菫の尖った視線が突き刺さり。