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逃亡
【その他 官能小説】

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逃亡-25

「ハンバーガーはまだかね。」
 いきなり美咲の方を振り向いて、何事もなかったかのような顔で緋村が言う。
「あっ、ただいま…」
 美咲が我に返って紙袋を渡そうとするが、届かない。しかたなく、カウンターを出て、紙袋を渡した途端、緋村は美咲の手首を掴んだ。手首に火を押しつけられたような感じがして、美咲がビクンと全身を大きく震わせる。
「さて、次はお嬢さんにも参加してもらおうかな。」
 自分を見る緋村の目が異様な光を放ち、美咲は蛇に睨まれたカエルのように声も出なかった。身体がガクガク震えるのがわかる。
「…や、やめて…」
 その声は、緋村の背後から聞こえた。
「ん?」
 緋村は意外そうな顔で助手席を振り返ると、瑞紀が思い詰めた眼差しで緋村の目を直視している。口の端に精液がこぼれた痕があるのが痛々しかった。
「やめてください、一般市民を巻き込むのは…。」
「おやおや、まだそんなことが言えるのか。」
 さすがの緋村も一瞬あっけに取られたような顔をした。しかし、すぐに嘲るような表情を浮かべる。
「だが、せっかくの楽しみなんだ。ご立派な警部補殿のお言葉に従うわけにはいかないな。」
 そう言いながら、緋村が美咲を車に引きずり込もうとしたまさにその時、車の中の無線機が鳴った。
 緋村は、腹立たしそうな表情で無線機を取り上げ、相づちを打っている。
 そして、心底残念そうな表情を浮かべて、緋村は美咲の手首を放した。
「残念だが、時間切れのようだ。この埋め合わせは警部補殿にしてもらうことにしよう。」
 瑞紀は緋村に頭を押さえられて、再び口に肉棒を入れられた。
 次の瞬間、バタンとドアが閉まり、車が発進した。

「そして、すぐにパトカーが来たんだな?!」
 それまで黙ってコーヒーを飲みながら聞いていた野上が、いきなり大声で尋ねた。
「…は、はい…。」
 美咲はどぎまぎしながら答えた。叱られた時のように、今にも泣き出しそう顔をしている。慌てて西岡がフォローする。
「あっ、別に君を怒鳴ったわけじゃないよ。本当に参考になる話を聞かせてくれてありがとう…。」
 西岡が必死で美咲をなだめている横で、野上は眉間に皺を寄せて考え込んでいた。これまで一つの可能性として考えに置いていたものが、急に現実味を持ってきた。
(おそらく内通者がいる。しかし、誰が、何のために?)


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