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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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杏を頼む-5

ピンを豪快に倒す音が広い空間中に鳴り響き、若い男女が歓声を挙げる地元ボーリング場

遠くで彼らと同じく球を持つ杏と、その近くでイスに腰掛けその様子を眺める彼女と
同年代らしき少年…誰なんだ?

「東堂真雄…。」
「へ?」

奥のゲームコーナーで身を潜める僕と御園サン。

彼女なりの気遣いか、今杏がどういう状況にあるのかを教えてくれた。

昨日御園サンと会ってから夕方に突然「あの子の様子、知りたいでしょ?」と電話が来て
明日には再び小樽の病院に戻る予定だったのダガ。

ポツリと申した知らない名前、杏と馴れ馴れしくしてるあの人が…。

そして御園サンから、彼がどういう人間で、杏とどういう関わりがあるのかを教えてもらった…。クラスで人気があり、音楽を嗜んでおり、杏に気がありそれなりに仲がいい事など…、状況がひしひしと解って来て。

ストライクを出し、子供のようにはしゃぐ杏、変わってないな…。

変わってるのはその隣に僕以外の男性と共にいる事。

ノリノリで両手でハイタッチをしたり、ジュースを彼に差し出したり、まさに話通りとても仲が良い、周囲からしたら恋人そのものだ。

「やーん、ピン一本残ったぁー。」
「それって何気に悔しいよね。」

ポツンと一人取り残された孤独感、彼女の横にいていいのは僕だけだと思っていたのに。
こうも容易く自分のポジションを占領される何て。

球の投げ方を指導する為、体を密着させる彼。ホント馴れ馴れしい離れろっ!

案の定嫉妬の業を燃やす僕、しかし。

「はぁー疲れましたねぇー、でもボーリングは嫌いじゃないですー。」
「お疲れ!」

一息入れてイスに腰掛ける彼女。そんな彼女にタオルを差し出す彼。

「ありがとう!いやーお蔭で良い汗を掻けました。」
「こちらこそ、付き合ってくれてホント良かった。」

どうやら学校でボーリングに行かないかと誘われたらしく。

「でも何でまた?」
「えっ、いやー君と居ると楽しいから…。」
「……。」

急に静まる空気、何かまずいな…僕的に。

「それって、デート、だよね?」
「うっ、それはぁーそのー。」

杏も一体何を、これって浮気では?いやその事は彼女だって解ってる、あの人が一方的に
攻めよってるだけだ、でも彼といて楽しそう、ボーリングだって断る事だって出来た。

「ねぇ!私達付き合っちゃおうか?」
「えっ?」

聞き間違いではない、間に入ってしまおうか?いやそれはダメだ。あぁただこんな場所で
隠れるだけなのが情けない、胸が締め付けられる。

彼女も冗談で言っているのであろう、こっちからしたら笑えないジョークだが。

「どうよ?」
「……。」
「東堂君?」
「ダメだって。」
「何が。」
「決まってるだろ?君は人妻なんだろ?」

人妻って…。彼も僕と彼女の事は知っていると、御園サンから聞いた。

「あら、良く覚えてたね…。」
「笑い事じゃないだろ?」
「……。」
「俺は君とは付き合えない、俺こんなちゃらんぽらんしてるケドちゃんと解ってるつもりだ…。あの日君に回し蹴りをされそうになって、これでも深く反省してるんだ。」
「東堂…君。」
「君には彼が居る、あの優しい絵描きサンが…。」
「……。」
「なら誘うなって?デートみたいな事すんなって?。悪いな、それも仕方がない…、だって好きなんだもの、君の事が…。」
「!それって。」

やはり諦めてなかったか…、そう悟り、息を殺し僕の傍にいてくれる御園サン。

「でも、これっきりにするよ、こういう事をするとクラスの連中が「付き合ってんのー?」だの何かとうるさいし、君にだって色々と迷惑を掛ける、何より人妻に手ぇ出して叶わぬ恋をしたってつまらない。」
「それは…。」

つくづく理解してきた僕らの関係、そっか、杏は僕と共にいてくれる…、こんな臆病で
死んだ事にして何も言わない僕何かを…。

そして東堂、という人もその事実を受け入れ、彼女の想いを踏みにじり己の物だけにしよう、何て思わず、悪魔で彼女の幸せを願ってくれる。

僕は色々と勘違いしてた、二人がとても賢く素晴らしい人間に見えてきた。

「長谷川君…。」
「……。」

僕は、僕は……。

自分の中で、ある決心がついた。



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