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僕をソノ気にさせる
【教師 官能小説】

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僕をソノ気にさせる-20

「……でも、迎えに来た時、なんであんな変な感じだったの?」
 杏奈は優也を迎えに家に向かう途中、ビルのガラス戸に映った自分の姿を見てからずっと、
(失敗した……。ハリキリすぎちゃった)
 と、本日のスタイルを後悔していた。外出は杏奈も楽しみだったから、お洒落に飾りたくて選んだ服装は、杏奈の容姿に見事にマッチしていたが、ガラス戸に映った姿、特にスカート丈が短いのを見て、初めて優也の家を訪れた日の智樹の言葉を思い出したのだ。
(お婆ちゃんに怒られるかなぁ……)
 せめてもとブレスレットを一旦外してバッグにしまったが、あまり効果はなく思えた。玄関で優也が出てくるのを待っている間、祖母の前で頻りに前かがみになってスカートの裾を引き、なるべく丈が長く見えるように前屈み気味になっていたのが、理由を知らない優也には不自然な動きに見えたのも当然だった。
「……、ま、ちょっとね」
 中途半端な笑顔でごまされて着いた駅の券売機の前で、優也は路線図を見上げた。ICカードなど持っていない優也は切符を買わなければならない。
「どこまで買えばいい?」
「渋谷まで」
「え」
 目的地が若者にあふれる繁華街と聞いて、優也は更に不安になった。杏奈と釣り合いが取れないこんな姿で、人目の多いところへ行くのが恥ずかしい。
 一度そう思ってしまうと、電車の中でも誰彼とない視線が気になってしまう。周囲を伺うと、吊り広告やドアの上のモニターを眺める杏奈に目を向けてくる人が多いような気がした。
「……大丈夫だよ?」
「え?」
「私がついてるじゃん? 別に誰がどうこうしてくるわけでもないし」
「……うん」
 周囲の様子をやたら気にしている優也を、杏奈は久々の外出で不安に見舞われているものと思ったらしい。優也は不安は不安だったが、それは対人的な恐怖ではなく、人目を惹きつける杏奈を、自分が貶めてしまってはいないかという心配だった。
 渋谷駅を降りると、平日だというのに人でいっぱいだった。東急とJRを乗り換える人々が様々な方向に歩き、すれ違ってくる。
「ん」
 杏奈が優也を振り返って手を伸ばした。手のひらを見せている。
「い、いいよっ……」
 手を繋ごう――、抗い難い誘惑だったが、子供扱いされ過ぎているようであまりにも恥ずかしく、優也は赤面して断った。
「そぉ? じゃぁ、はぐれないでちゃんと追いてきてね」
 地上に上がっても多くの人が歩いている。杏奈が導いていく方向へ追いて行きながら、ヒールの高いストラップサンダルの靴音が聞こえてきて、よくそんな靴で普通に歩けるなあ、と感心していた。そして改めて手を繋がなくてよかった、と思った。平日だというのに、文化村通りには同年代が多くいた。女の子が多いように見える。杏奈のような大人と手を繋いでいる自分を見たら、珍奇の視線を集めたに違いない。
 通りの果てにある百貨店を昇って行くと巨大な書店に着いた。
「すごい……、広いね」
 初めて来る大型書店を眺め、優也が率直な感想を漏らすと、
「東京の本屋さんではかなり大きいほうだよね。この本屋さんって専門書もたくさん置いてるし。……ね、持ってくれる?」
 杏奈は優也にカゴを渡し、『中学参考書』というプレートが設けられた棚へ歩いて行った。全ての教科の、各出版社から出された参考書、問題集が並んでいる。ズラリと並ぶ大きな書棚にびっしり本が詰まっている光景は、優也には新鮮だった。
 杏奈はブックマークしていたサイトを見つつ書棚を探し、目的の本を見つけるとパラパラとめくって確認し、「どぉ?」と優也に見せてくる。差し出すときに距離が近まって、いつもより華やかな杏奈から家庭教師の時とは違う香りが薫ってくるので、優也の鼓動は否応なしに高まった。
 そんな優也を尻目に、杏奈が参考書、問題集を確認してはどんどんカゴに入れて重みが増していくと、
「そんなに買うの?」
 と優也は心配そうに問うた。
「だって、せっかく来たんだもんね……。えー、この本って結構マイナーなんだぁ……、よっと……」
 杏奈は書棚を見上げたまま、売れ筋ではないため高い位置に配してあった本を取ろうとしたが届かず、「ね、優也くん、アレ、持ってきて?」
 背伸びをしたまま離れたところにある踏み台を指した。優也が持ってくると、杏奈はサンダルのまま踏み台を昇って目的の本を手に取り、降りずにそのまま中身を確認する。踏み台を上がると、優也の目線の近くまで杏奈のスカートの裾が一緒に昇ってきたから慌てて目を逸らした。
「そんなに買えないよ。お金足らないもん」
「え? ……ああ、その心配ね」


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