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僕をソノ気にさせる
【教師 官能小説】

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僕をソノ気にさせる-19

 杏奈が膝を曲げて片足を上げて編み上げサンダルを見せて頼むと、
「わかった」
 と言って優也が部屋に戻っていった。ペンケースは机の上ではなく、杏奈の椅子の真下、少し探しにくい場所に置いてある。
「あの……、優也くんなんですけど。本屋以外の場所に連れて行ってもいいでしょうか」
「といいますと?」
 杏奈が改まった話をするために、意図的に忘れ物をしたことを感じ取った祖母も、部屋に戻った優也の耳を気にして少し声を密めた。
「はい。智……、久我山先輩からお聞きしましたが、優也くん、殆ど外に出ていないということだし。本もいいですけど、この先も勉強していくには世間も色々知らなきゃいけないと思うんです。社会や理科はその応用ですから」
 智樹から「あいつ、ここ何年かどこにも行ってないぜ? 行きたがらないんだよ」と教えられた。勉強もいいけど、このままだとどこにも行けない奴になってしまう。そんなんじゃ、一人で生きていけない。祖母を除く久我山家が心配していると聞いた杏奈は、参考書が必要になった時、この外出を思いついたのだった。
「まぁ、そこまで……」
「もちろん、変な所には連れて行きませんし、私がずっと居ます。携帯で定期的に連絡もします。ですから……」
「いりませんよ、連絡なんか」
 杏奈が頭を下げると、祖母は口元に袖を当て可笑しそうに笑った。「……ええ。須藤先生にお任せします」
「あったよ。椅子の下に落ちてた」
 優也が戻ってくる。
「おー、ありがと。……今、お婆ちゃんにも話したんだけどさ、本買いにいくついでに映画観ようよ」
「……映画?」
「そ。映画」
「人が多いところは……」
「大丈夫。そんな最近の映画は見ないんだ。昔の映画。ちっちゃい映画館でやってるの」
 さっき検索していたままにしていたスマホの画面を見せる。「これ」
「……『アラバマ物語』」
「まぁ」
 画面を見て優也が読み上げた題名に、祖母が声を上げた。「昔、大ヒットした映画ですよ。私も見ました」
 優也は祖母に、へぇ、という顔をした後、杏奈を向いて言った。
「……ハーパー・リー、だね」
「おっ、さっすがぁ」
「お爺ちゃんの本棚にあった」
「当然ですよ」
 祖母が何度も頷く。「私と観に行ったんですもの」
「小説は読んだんだろうけど、映画は見た?」
「見てない」
「よしっ」
 杏奈は両手を胸の前でギュッ握って引く。「ね? きっと面白いよ。行こうよぉ」
 優也はチラリと祖母を見た。祖母は柔和に微笑むと、
「いい映画だよ」
 と言った。
「……どこまで行くの?」
「だーいじょうぶ。私についてくればいいから。じゃ、明後日でいい? お昼の一時に迎えに来るからっ」
 そう言い残して杏奈は帰っていった。
 優也は突然にもたらされた外出に、喜びと不安の両方を抱えて翌日を過ごした。一週間でもう一日杏奈と過ごせるのは嬉しい。しかもそれは勉強ではない。デート。読んできた本の中にもその場面はあった。惹かれ合う男女が一緒にどこかへ行く。行くことが目的ではない、同じ時間を過ごすことが目的だ。
(デート……、じゃないよな)
 あまり期待してはいけない、と優也は努めて考えた。きっと杏奈にとっては友達どうしで遊びに行くのと変わらない感覚だろう。しかしそうだとしても、「恋をしている」と自分の気持ちを認めてしまった優也は、杏奈に恥ずかしい思いはさせたくなかった。
「……変、かな?」
「ん? 何が?」
「僕の服……」
 当日、駅へと歩きながら、優也は杏奈に尋ねた。
「別に変じゃないよ?」
 杏奈はそう言ってくれるが、やはり気になった。素朴なTシャツとジーンズ、スニーカー。外出をしないから優也が衣服を選ぶべくもない。祖母が買ってくれたものだ。たった一日の猶予ではデートに耐えうるだけの衣装は用意できないから、手持ちの服の中から選ぶしかなかった。だがタンスの中身は色味くらいしかバリエーションがなかった。優也はネットのファッションサイトを調べて、組み合わせについて最善を尽くしたつもりだった。
 変じゃないという言葉でも優也の不安が晴れないのは、隣を歩く杏奈の姿があまりにも眩しかったからだ。家庭教師のときはブラウスに細身のパンツやフレアスカートなど、比較的シンプルな服装が多い。だが今日の杏奈は膝上丈でシャープなラインのワンピース姿だった。ピンクゴールドのリングピアスやブレスレットもしている。いつもは下ろしている髪も、シュシュでふわりと後ろに結っていた。華やいで美しい、大人の女性然としたいでたちに、優也は怯んでいた。


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